“多方面外交”を進めていたのに台風が…… 幸楽苑は苦難を乗り越えて復活できるか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
一時期は落ち込んでいた幸楽苑が復活しつつあった。しかし、台風により工場が被災してしまう。試練を乗り越えて復興できるか。
他チェーンとの“多方面外交”を展開
また、赤字転落の原因の1つに自店舗同士のカニバリゼーションがあると見た同社は、2017年にペッパーフードサービスとフランチャイズ(FC)契約を結んで「いきなり!ステーキ」の展開を始めた。勢いのある他社のFCに加盟して業態を多様化する戦略に転じ、一定の成果が出ている。現在は、それに加えて焼き肉のファストフード「焼肉ライク」(FC元はダイニングイノベーション)、鍋と鶏せせり焼「赤から」(甲羅)、から揚げ「からやま」(アークランドサービスホールディングス)を含めた4ブランドで、出店を進めている。19年9月末で、いきなり!ステーキが16店、焼肉ライクが3店などとなっていた。
国分寺市内にある幸楽苑から転換した焼肉ライクに行ってみた。すると、新橋の焼肉ライク本店にはないラーメン(ごまネギ塩ラーメン、旨辛チゲラーメンの2種類)がメニューにあった。この店では、幸楽苑らしい提案がされている。メニューにはビビンパやスンドゥブもあって、郊外立地だけに、ビジネス街の1人焼肉の需要だけではなく、ファミリー層も楽しめるように、麺類やご飯物、鍋などメニューの多様化を図っている。
また、「かつや」を主力とするアークランドサービスとは9月に業務提携を行い、共同で販売促進などを行っていく方針だ。
かつやチェーンでは、幸楽苑のラーメンダレを具材のジャガイモの味付けに使ったラーメンコロッケを開発して、「ラーメンコロッケとロースカツ定食」を販売している。からやまチェーンでは、「らーめんからあげ」を開発して、単品で売るだけでなく、定食としても提供している。両品は、ラーメンダレをダシとして使用し、昭和風の懐かしさを感じる味わいに仕上げている。
一方で、幸楽苑チェーンでは、かつや監修の「ソースカツ丼」を販売。秘伝のソースが掛かった2枚の小サイズのとんかつの下に千切りキャベツが敷かれている。ソースかつ丼は、幸楽苑発祥の地である福島県会津若松市のB級グルメとのことだが、かつやのソースとカツとキャベツのハーモナイズにより、ご飯との相性の良さが改めて認識されるような洗練された料理になっている。
このような他チェーンとのコラボは、台風以前から進んでいた企画ではあるが、なかなかよく練られており、幸楽苑の集客アップに寄与していくだろう。気になるのは「いきなり!ステーキ」が大衆に飽きられて大失速していることだが、他にも頼りになるチェーンと提携しているので、リスク管理はできている。
幸楽苑が台風19号の被災を力強く乗り越えていく挑戦に、期待したい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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