モーターショーに女性コンパニオンは本当に必要か――「男性目線マーケティング」で露呈した矛盾:元ドライバーの女性ジャーナリストが斬る(4/4 ページ)
きらびやかな女性コンパニオンが目立った東京モーターショー。「男性に絞った」イメージ戦略は今なお有効なのか? 元ドライバーでもある女性ジャーナリストの筆者が斬る。
「女性コンパニオン」、欧米では減少傾向
こうした女性コンパニオンたちは、各派遣事務所に所属している場合が多い。国内の事務所を数社調べてみると、所属するほとんどが女性だ。
同じようなイベント系のモデル事務所は欧米にも存在するが、男女の割合はほぼ半々で、モーターショー会場にも「煌びやかな女性」は、日本に比べるとその数は明らかに少ない。
その傾向が顕著になったのは、2010年代。「若くてキレイで細い」だけが女性の魅力ではないとして、欧米のモーターショーやF1などのレース場から、女性モデルやグリッドガールは徐々に姿を消した。
こうした動きは、ミスコンなどにも波及し、内面や才能をより評価するようになり、水着審査を廃止する団体も増えてきた。ミス・アメリカ2020において、ステージ上で化学実験を行った女性がグランプリに選出されたのも記憶に新しい。
そんな中、近年の東京モーターショーでも、いくつかのメーカーには「男性コンパニオン」が登場し注目を浴びたが、女性や家族連れ来場者の増加に鑑みると、その比率は大変少ない。そもそもクルマの展示会においては「キレイな女性を立たせているのだから、カッコいい男性も立たせればいい」という理屈でもない。
純粋に「クルマのショー」を楽しむために必要なのは、そのクルマに乗った環境に近い想定をするべきで、ファミリーカーには家族のモデル、商用車には作業服を着用した男女を立たせるのが最も自然のはずだ。
自身の生活環境に応じ、女性もファミリーカーや軽自動車、スポーツカー、商用車などに興味を抱く。女性ならではの感性を刺激し、女性に対しても魅力的なクルマを演出できれば、男性であろうが女性であろうがコンパニオンは必要ない。
女性でも筆者のようにクルマ好きは多くいる。特に最近の女性ドライバーの割合は伸び、女性でも運転しやすい構造を売りにしているメーカーも多い。実際、77万1200人の来場者があった前回の東京モーターショー2017では、4人に1人が女性だったという。
背景やブースのディスプレイに工夫を凝らすなど、女性が楽しめるイベント会場づくりにすれば、現在の男性カメラマンと同じように、インスタ映えを狙った若い女性も増えるだろう。インスタ映えありきで行動する昨今の女性の発信力は、カメコを凌ぐはずだ。
次回の東京モーターショーは2021年。男性目線のモーターショーは、いつまで続くのだろうか。
関連記事
- 京急踏切事故で垣間見えたトラックドライバー業界の「構造的な闇」とは
電車の乗客ら35人が負傷、トラック運転手1人が死亡した京急踏切事故。その背景に筆者が垣間見たのは極端に高齢化が進むトラック業界の闇だった。データや現場取材、自身のドライバー経験を踏まえ迫る。 - 「台風19号でもトラックの中止連絡無かった」――走り続けた零細物流が陥る“負の業界構造”とは
台風19号では多くの業界がサービスや営業を停止した。しかし筆者は「中小運輸では走っていたトラックも少なくない」と指摘。運輸業界特有の構造的問題に迫る。 - 2020年「正社員の年収激減」の恐怖 賃下げの意外なターゲットとは
2020年から正社員サラリーマンの年収が激減する恐れ。ポイントは同一賃金同一労働の施行だ。意外なモノが「賃下げ」のターゲットになる可能性が。 - アマゾン「置き配」の衝撃 「お客様が神様で無くなった世界」で起こり得る“格差問題”
配達員が荷物をユーザーの指定場所に置く「置き配」。アマゾンジャパンが標準配達方法にする実験を実施した。筆者はユーザー間で一種の「格差」が生じる可能性を指摘。 - 東京モーターショーに出現、「おしゃべりトラック」は運転の世界をどう変えるか
東京モーターショーに「しゃべるトラック」がお目見えした。音声だけでなく光る文字でコミュニケーションが可能。運転や道路の世界をどう変えるか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.