「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけない:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
カルロス・ゴーン氏が、会見を開く予定だ。「大丈夫でしょ。悪いのは彼なんだし」「すぐに逮捕して、日本に戻せ」といった声が聞こえてきそうが、大きな声をあげればあげるほど、日本にダメージを及ぼすリスクがあるのだ。どういうことかというと……。
ゴーン氏の逆襲
明日、ゴーン氏がどのようなメッセージを発するのかは分からないが、それが日本にとってはかなり耳の痛い内容であることは間違いない。
我々がどんなに「日本には日本のルールがある」と正当化をしようとしても、日本の司法制度が「中世」でピタッと針を止めたままになっており、国際社会でたびたび批判にさらされているのはまぎれもない「事実」だからだ。
悪名高い「人質司法」をはじめ、過去の証拠捏造事件などにもあった「ストーリーありき」の捜査、そして99%という出来レースのような有罪率……。日本の捜査機関がうたう「正義」は、世界一の品質をうたう日本企業が実はデータ改ざんをしていたように、かなりの粉飾を経てでき上がった「つくられた正義」なのだ。
日本人は、あんな強欲な男の主張など、誰も耳を貸さないなどとたかをくくっているが、国際社会では、ゴーン氏が自身の受けた仕打ちを明かして、「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」と言えば、納得する者ははるかに多い。
だから、フランスのフィガロ紙が行ったアンケートでも、ゴーン氏が日本から逃げ出したのは正しかったと回答した人が77%にも及んだ。オリンパスの粉飾を告発をしたマイケル・ウッドフォード氏も、「公正な裁判を受けられるかに強い疑念があり、深く同情する」としてゴーン氏の行動に理解を示した。
逃げたのは悪いことだが、日本はそうせざるを得ないほど「ヤバい国」だという評価がじわじわと広がっているのだ。
「ゴーンの逆襲」が日本に与えるダメージをあまりナメないほうがいいかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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