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ゴーン会見への反発に見る「外資の常識」 、反発する日本のおやじ(2/3 ページ)

ゴーン被告の記者会見が行われたが、その内容は自己弁護と日本の司法批判に終始したため、SNS上などで批判の声が多い。ただ、そうしたコメントを見ていると、日本のおじさんとグローバルコミュニケーションの間にギャップがあって……。

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(2)日本の(おやじたちの)反発と外資

 そもそもゴーン氏の会見の目的は謝罪でも何でもなく、はじめから自己弁護だったからです。自己弁護とそのための自画自賛、それに伴う日本以外からの国際世論の支持を得ることを目的とするコミュニケーションである以上、すべて予定通りに会見は進められたといえます。自分が犯罪で訴追されているのに自己肯定を堂々と行うことに対する反感や批判は、ゴーン会見の目的と全くずれたものとになります。

 かつて「日本産業」と、国の名を冠した財閥企業だった日産。今や日産は日本における最も巨大な外資系企業の一つです。日頃進路指導している学生たちにも、ゴーン氏を知らない者はいないにもかかわらず、日産が日本最大級の外資系企業だという認識を持たない者がほとんどです。

 グローバル化の流れで勤務先が外資系企業に買収されたり、外資系企業に転職する人も増えたでしょう。しかし「外資」と一言でいっても、オフィスの半分が外国人、それも欧米系白人だったり、社内文書やメールがすべて英語というようなものはドラマや映画の世界です。私が知る限り圧倒的に多くの外資系企業のオフィス環境は、見た目で日本の企業とのがつきません。

 外資とは「資本」が外国人に握られていることですから、実際に外国人がオフィスにいなかったり、社長や役員以外全員日本人の外資などごく普通です。しかし、外資は外資なのです。この意味がわからないドメスティックな感覚で勤務すると悲劇が起こります。特に長年日本のドメスティック企業の体質が染みついた人は、大きく混乱し、迷走する恐れが高いのです。

(3)「謝ったら負け」の世界に謝罪を求める愚

 外資の常識では「自分の過ちを認めたら負け」などともいわれます。私は外資系企業勤務の方が長く、またヨーロッパやアメリカだけでなくアジアの企業とも取引をしてきましたが、正確に言うと「謝ったら負け」なのではなく、「いわれなき批判でも否定しなければ肯定」と考えるべきだと思っています。

 自分の業績アピールをできず、転職面接で「そこそこ業績を上げてきました」的な謙遜をしてしまうような、典型的日本人の美徳を備えた物腰は、グローバル環境において理解されることはないでしょう。

 つまりきちんと主張すべきアピールができない=能力がない=ダメ=間違っているという価値観です。そのために盛りに盛って自らが会社すべてを動かしていたかのようなとんでもない大ブロシキを広げるアピールも何度も聞きました。しかし聞く側はただのバカではないので、そのプレゼンをうのみにすることはありません。自らの眼で、その真偽や説得を検証し、自ら判断する(できる)人物が評価します。

 ゴーン氏が自画自賛会見をすることはしごく当然であり、その場で「新たな情報がない」など全く意味をなさない批判ではないでしょうか。訴えをアピールしたい相手はこうした日本的価値観に基づく日本人ではなく、そのようなグローバル環境を共有できる日本「以外」だからです。英語とフランス語に加え、アラビア語?? までまじえて説明するゴーン氏に対し、日本の対応はどうだったでしょう。

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