赤字に苦しんできたダイエーに“復活”の兆し 流通帝国の崩壊から黒字化までの道のりをたどる:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
再建途上のダイエーが黒字化しそうになっている。一大流通帝国を築いた道のりを振り返る。なぜ、今になって復活の光が見えてきたのか。
ダイエーは「解」にたどり着くか
ところで、ダイエーの店舗に行くと、イメージキャラクターの「モッくんファミリーのうた」という音楽が流れている。「モッくん、モッくん」と連呼する歌詞がやたらと耳に残り、よく知らない人だと「モグモグ」と聞こえるので、「グルメをアピールしているのかな?」と思えてくる。
もともと「モッくん」は「木曜の市」セールを宣伝するキャラクターだった。しかし、現在は日曜日にイオンカードで支払うとポイント10倍になるなど、ポイント還元に力を入れている。電子マネーで支払うと毎月5、15、25日がポイント2倍になったりと、幾つかの企画が混在していて分かりにくい。
あれだけ「モッくん」を連呼し続けるなら、木曜の市に再度、集中してもらいたいものだ。
「ダイエーには買いたいものがない」や「GMSには買いたいものがない」と言われてきた。
サンフランシスコでは年収1400万円の4人家族は低所得者に分類されるという。日本の世帯年収で1000万円を超えるのは全体の10%程度だ。世界で最も豊かだったはずの日本の高所得者の大半が、気付けばサンフランシスコの低所得になってしまった。米国をベンチマークして、もっと安くていいものを売ってくれと求めても、企業努力には限界がある。
晩年、中内氏は「顧客が見えなくなった」と語っていたそうだ。老いもあるが、米国と差が付き、日本がどんどん貧しくなっていく過程で、どういう商品を出せばいいか、分からなくなったのだろうか。
イオンフードスタイルのコンセプトが分かりにくく、多くの店舗で建て替えも必要だが、ダイエーはやっとその解にたどり着こうとしているのかもしれない。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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