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新人の「分かりました」を信じてはいけない――仕事の精度が上がる「質問グセ」とは?新人の育て方 第3回(2/2 ページ)

新人育成のプロフェッショナルが語る、育成スピードを上げるためのコミュニケーション術。

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仕事を任せるとき、強制的に質問をさせてもいいのか?

 新人に仕事を任せる際に意識してほしいのは、指導者側が完璧に教えようと思わないことです。いくら丁寧に業務を教えても、伝えきれない部分や新人との認識のズレはどうしても出てきてしまうので、完璧を目指すのは無駄です。

 そこでオススメしたい方法は、みなさんが新人に「強制的に確認の質問をさせる」というアプローチです。

 例えば、あなたが新人に、依頼したい仕事を説明したとします。そこであなたは新人に次の質問をするのです。

「確認したいことを最低3つ言ってもらえるかな?」

 このように、依頼する仕事のやり方を教えたら、新人に強制的に質問をさせ、理解度を確認し補足していきます。

 完璧に教え込むなどしょせん無理な話ですし、食い違いは必ず起きます。また、新人は丁寧に教えてくれた先輩に「分かりません」とはなかなか言いづらいものです。

 新人の確認したいことに回答し終えたら、ダメ押しで次の質問を新人に投げかけます。

「まだ確認したいことがあるんじゃないの?」

 こう促し、あと1つ、2つ質問に答えれば、新人はかなり安心するでしょう。

 質問があるのに言えないで一人で悶々と考え込んでしまい、依頼された仕事を効率よく進められない新人が多くいます。育成スピードを上げるには、仕事が前に進められず、悶々としているアイドリング時間をいかに短くするかが大切です。


新人の“アイドリング時間”をいかに短くするかが重要(写真提供:ゲッティイメージズ)

 私たち指導者は、質問が出ないように完璧に教え込もうという力をゆるめ、新人に疑問点を出させ、内容理解を促進させることに意識を向けるべきなのです。

 ところで、新人に仕事を依頼したあとにも当然質問は出てきます。指導者は忙しいので、その都度パラパラと質問に来られるのも正直いって面倒です。

 そこでオススメするのが、指導者と新人の双方がともに閲覧できる「質問一覧表」作成です。質問をリスト化し、解決できたものは○、未解決のものは×の印を新人につけさせて、質問の一覧表を常にアップデートさせていくのです。

 新人と直接コミュニケーションを取れないときは、指導者であるあなたが回答をそこに書き込めますし、「この質問は隣の部署の○○先輩に聞いてみて」とコメントを残すこともできます。

 何より新人の質問(疑問点)を一覧できるので、何がどのレベルで分からないのか一目で把握できます。もちろん、直接新人と相対して口頭で回答することもできるので、ツールをうまく使い分けながら育成を進められます。

 まとめますと、仕事の依頼時は、レクチャー後に新人から強制的に質問を出させ、依頼後は、質問一覧表を活用して疑問点を解消するようにしましょう。疑問点をうまく引き出し、回答することで、効率的な育成を進められます。

  • 新人へ仕事を依頼する前

「説明の後に最低3つ、疑問点を質問してもらえるかな?」

  • 新人へ仕事を依頼した後

「疑問点が出たら、質問一覧表に記入してもらえるかな?」

 以上、仕事の精度が上がる「質問グセ」についてお伝えしました。忙しい中でもちょっとした指導者の質問を意識的に活用いただければと思います。

著者プロフィール・島村公俊(しまむらきみとし)

人事系コンサルティング会社を経験後、2006年ソフトバンク(旧ボーダフォン)入社。ソフトバンクユニバーシティの立ち上げ参画し、研修の内製化をリードする。

日本HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞、ソフトバンクアワードの受賞をはじめ、アジア初で米国教育機関よりPike’s Peak Awardを受賞。その他、千人規模の新人研修やエルダー(OJT、メンター)教育にも携わり、新人、若手の早期育成にも貢献する。

2015年に講師ビジョン株式会社創業。社内講師の育成トレーニング、OJTトレーナー研修、新人研修などを提供する。近著に『10秒で新人を伸ばす質問術』(東洋経済新報社)がある。


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