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コロナウィルス でGMO「一斉在宅勤務」迅速な決定の決め手は?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

GMOインターネットはコロナウイルス による新型肺炎の感染拡大に備え、4000人以上の従業員を在宅勤務体制に切り替えた。今回、GMOインターネットが感染症を事前にリスクとして想定していたかは定かでない。しかし、いずれにせよ同社の大胆・迅速な決定は揺るがなかったのではないかと筆者は考える。

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業務フローの改善とICTツールの導入

 今回、GMOインターネットが感染症を事前にリスクとして想定していたかは定かでない。しかし、いずれにせよ同社の大胆・迅速な決定は揺るがなかったのではないかと筆者は考える。

 なぜなら、同社はBCPに基づき、毎年定期的に一斉在宅勤務訓練を実施しているからだ。同社の訓練の趣旨は、緊急時においてもセキュリティが担保された状態で、社内外で事業継続ができる環境を整備していることにある。

 そうすると、遠隔で勤務できる業務フローの整備やツールの導入ができていれば、本質的には事由にかかわらず、緊急事態への応用が利く設計になっていたといえるだろう。

 つまり、BCPを策定する上では、個別のリスクにこだわりすぎて複雑なフローを検討するよりも、柔軟性のある設計の方が実務的に役立つということだ。例えば、紙での承認フローを、クラウドサービスに移行したり、メールに加えてSlackやChatworkといったビジネスチャットツールを導入したりするという方法によって、場所やコミュニケーションの制約を取り除くことは可能だ。

 心配な要素はセキュリティとなるが、これは業種によって考え方はさまざまである。しかし、MFA(多要素認証ソフト)を導入したり、端末管理ツールがインストールされた社用端末を供給したりなどして、セキュリティを担保した状態で在宅勤務を実施することも可能であるといえるだろう。

形骸化しないBCPは従業員の心理的安全性を高める

 足元では、GMOインターネットのメディア露出による広告効果を論じる動きもあるようだが、これは野暮なことだ。本質的には、普段は何の役に立つかよく分からない数十〜数百ページのBCPも、形骸化させずに訓練などを継続することで、いざという時に事業をスムーズに継続できることが明らかとなった。さらに、今回明らかになった新たなメリットにも言及しておきたい。

 今回BCPが見出した新しい意義としては、従業員の心理的安全性の向上がある。「会社が自分を大切にしてくれている」という心理的安全性が、従業員の生産性を左右する。また、そのような会社であることが認知されれば優秀な人材も興味を示すといった波及効果があるかもしれない。仮に、在宅勤務で心理的安全性が向上したとすれば、GMOインターネットの19年第4四半期以降の業績をチェックすることで、その効果が測定できるだろう。

 日本は災害大国であるため、緊急時の対応をまとめたBCP策定は必須といっても過言ではない。今年は東京オリンピックが開催されることもあり、テロなどの典型的なリスク以外にも、通勤時の大混雑といった非典型的リスク要因も想定しておかなければならない。安全性の高いICTツールの導入と、「会社にいないと成立しない」業務フローの見直しだけでも、生産性を落とさない柔軟な事業継続が可能となるだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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