WBCで日本を優勝に導いた里崎智也が語る「プロ野球ビジネスのオモテとウラ」:里崎智也インタビュー【前編】(4/4 ページ)
第1回のWBCで侍ジャパンを世界一に導いた里崎智也。現役時代から頭脳派捕手として知られ、組織論のスペシャリストでもある里崎は、将来、「千葉ロッテマリーンズの社長になりたい」と公言するほど、ビジネスへの感度が高い。そんな里崎に、スポーツビジネスの観点から、日本のプロ野球ビジネスの「オモテとウラ」を聞いた。
いま、日本のプロ野球ビジネスに必要なこと
――最近スポーツ界はスタジアムビジネスの風潮が高まっていますが、里崎さんは日本のプロ野球が盛り上がっていくためには何が必要だと思いますか?
グローバル戦略が一番じゃないでしょうか。日本市場の中だけではもう成立しなくなってきていますから。キャパは決まっていますし、人口も少なくなってきた今、台湾、韓国、シンガポールなどのアジア戦略が重要になってくると思っています。
これは勝手な妄想ですけど、特にシンガポールに着目しています。シンガポールには、日本の企業がたくさんあって、日本人がたくさん働いています。そこには、プロ野球ファンの人もいますよね。シンガポールには野球文化がないので、そのシンガポールに、最もクラシカルな一戦である巨人対阪神を持っていったら面白いんじゃないかなと思っています。
また台湾には、王さんがいるので、ソフトバンク対楽天なんかをもっていくと良いでしょう。韓国には、ロッテとDeNAとか。そうやってアジアの国々で、巨人の帽子をかぶる人を増やす、阪神の帽子をかぶる人を増やすということをやるんです。
メジャーリーグがイギリス(英国)で、ヤンキースvsレッドソックスをやったじゃないですか(19年7月1日にロンドン競技場で行われた一戦。この試合は欧州でMLB初の公式戦となった)。それはなぜかと言うと、ヤンキースとレッドソックスが名門だから。東京にはヤンキースの帽子をかぶっている人が、たくさんいます。ではアジアで巨人の帽子をかぶっている人がいますか? いませんよね。それを増やしていくのがアジア戦略です。
10年先を見据えた新しい「投資」を
――なぜ日本のプロ野球界は、今までアジア戦略をやってこなかったんでしょうか?
日本の中だけで成り立っていたからですよ。国内だけで成り立つから、世界に目を向けてきませんでした。例えばゴルフでも、よほど海外志向がある人じゃないと、外に出ていきませんよね。では韓国人のゴルファーはなぜ日本やアメリカに出ていくのか? それは韓国の中だけでは成り立たないからですよ。
――野球界の新しい動きといえば、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメントの共催で「eBASEBALLプロリーグ」をスタートさせました。新しい市場開拓という意味ではその効果はあると思いますか?
「パワプロ」を東京ドームでやって満員になるかというと、いまは難しいですよね。ただ、新しいことをやろうという方向性はすごく良いと思います。いまはわずかな利益だったとしても、もしくは多少赤字だったとしても、続けていくことが大事です。eスポーツ自体が始まったばかりですし、「eBASEBALLプロリーグ」も始まってまだ2年目です。この取り組みは5年〜10年先の未来に向けた投資なので、目先の利益にこだわる必要はないと思います。(後編に続く)
著者プロフィール
瀬川泰祐(せがわ たいすけ)
1973年生まれ。北海道出身。エンタメ業界やWeb業界での経験を生かし2016年より、サッカー・フットサルやフェンシングなど、スポーツ競技団体の協会・リーグビジネスを中心に、取材・ライティング活動を始め、現在は、東洋経済オンラインやOCEANS、キングギアなど複数の媒体で執筆中。モットーは、「スポーツでつながる縁を大切に」。Webサイトはこちらから。
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