コラム
サービス提供者に犠牲を強いる「おもてなし」というブラック労働の素(3/3 ページ)
新型肺炎が猛威を振るう中でも、サービス業は接客しなければならない。「サービス業で、マスクをするのは失礼」と感じている人も多いかもしれないが、本当にそうなのか。「おもてなし」の心は、ブラック労働につながっているかも……。
金払わなければ客ではない
「お客様は神様」の真の意味として、クレーマーを増長させる意図ではないという、三波春夫さんの真意を初めて解説した拙著「謝罪の作法 (ディスカヴァー21)」では、「お客様はお客様」というサービスの基本を説きました。払った料金に相当するサービスを受けられるから、お客様だけでなく提供側も等しく利益を共有できます。
「おカネはもらわなくともサービスだけを提供したい」と、経営者が望むのは自由ですが、従業員に無償奉仕や低賃金なのに高度なサービスを強要したり、そう洗脳することでブラック労働は生まれます。「お客様は”お客様”」、つまり払っていただいた料金と相応のサービス提供こそ理にかなうコストシェアです。適切なコストシェアによって、ブラックな労働やブラックな職場を防ぐことにつながります。
かつて医療業界で仕事をしていた際、医療業界ヒエラルキーの頂点に君臨する医師には、業界全体で「先生様」扱いが常識でした。しかし営業責任者として未払い金数百万円の回収をした際は、「先生」とは呼ばずに「代金をいただかなければお客じゃないですよ○○さん」とこの時とばかりにウサ晴らしできました。
従業員への犠牲を強いることによる「お客様第一主義」や「おもてなし」、それによってブラック労働を忌避する従業員が集まらない、人手不足は、企業の自己責任なのではないでしょうか。(増沢 隆太)
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