脱24時間で息吹き返したセブン加盟店、密着ルポで迫る「時短営業の意外な現実」:コンビニオーナー“大反乱”の真相(1/5 ページ)
コンビニ業界に脱24時間化の激震が走る。最大手・セブンのとある時短実施店に筆者が密着ルポ。意外な実像から浮かび上がる「コンビニの未来像」とは。
コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン)は2019年、時短営業の実証実験を実施した。セブン本部は当初、直営店だけで行う予定だったが、フランチャイズ加盟店からの要望もあり、小規模とはいえ加盟店も実験に加えた。
同年10月にはさらに、時短営業のためのガイドラインを策定、加盟店に配布し、「24時間をできるだけ維持してほしい」という本音をかいま見せながらも、実証実験ではなく本契約としての時短も、一律に拒絶はしないという態度を示した。ファミリーマートが今年6月から「24時間営業原則の正式取りやめ」に踏み切ることを決めるなど、業界全体で同様の流れが加速している。
では、24時間営業だったコンビニが時短営業に踏み切ると、実際のところ店舗運営や客の反応、そして売り上げ、利益はどう変わるのか。19年に6カ月間の実証実験(試験的措置)を経て、同年12月から「正式な時短店」となった大阪府内のセブンA店を取材した。
深夜売り上げではバイト給与も賄えず……
A店は私鉄駅に近い路面店で住宅地の中にある。オーナーのBさん(40代男性)が実験に手を挙げたのは、人手不足でオーナー自身の負担が重い割に、夜間売上が低いのが理由だった。
Bさんと履行補助者(いわば店長の右腕の従業員)の女性のほかにアルバイトは6人。夜間シフトは、午後10時〜午前6時まで週4回入ってくれる人が1人と、午後10時〜午前2時まで週3回入ってくれる人が1人。Bさんは午前2時までは必ず店にいて、同時刻でアルバイトが店をあがる日には、引き続き自身が翌朝までワンオペで店頭に立った。
週3日の夜勤に加え、夕方掛かってくる電話も頭が痛かった。アルバイトが急に「今晩入れません」と言ってくることがあるからだ。
さらに、現在は営業を止めている時間帯、午前0〜6時の売り上げは約5万円(日販の10〜11%)だった。粗利率30%、チャージ(ロイヤリティー)率60%で試算すると、店に残るのは5万×30%×40%=6000円。他方、深夜のアルバイトを1人体制にしても、夜間は、労働基準法の規定で時給が25%増しになる。大阪の最低賃金は964円だから、964×1.25×6時間=7230円。午前0〜6時の売り上げでは、アルバイト1人の時給もまかなえなかった。
セブン本部「時短中は閉店時も有人に」
「体が休まるように」という動機もあって始めた時短営業(午前6時〜0時)だったが、「時短後3カ月の方が、その前より辛かった」とBさんは意外な事実を明かす。セブン本部は当初、「時短の実証実験をする際には閉店中も有人にするように」と指示していたのだ。
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