脱24時間で息吹き返したセブン加盟店、密着ルポで迫る「時短営業の意外な現実」:コンビニオーナー“大反乱”の真相(2/5 ページ)
コンビニ業界に脱24時間化の激震が走る。最大手・セブンのとある時短実施店に筆者が密着ルポ。意外な実像から浮かび上がる「コンビニの未来像」とは。
セブンA店の閉店・開店を密着ルポ
閉店中は売り上げが立たないからアルバイトは頼めない。Bさんは「閉店中の有人」業務を一手に引き受け、在庫を置く倉庫に置いたベンチソファで仮眠を取りつつ、午前3時頃届く商品の納品にも対応していた。
その後、実験中でも「閉店時間帯の無人」が認められた。閉店中も人を配置しろ――。コンビニ以外では聞いたことも無い不条理な指示も、本部が時短に後ろ向きだった証左に映る。もっとも「深夜有人」は最初の3カ月で、その後3カ月は「深夜無人」が認められ、19年12月から正式な契約で時短営業を始めることになった。
コンビニの業務は、配送の受け入れなども含め24時間営業に合わせて最適化されている面がある。深夜閉店すると、「深夜にやっていた業務をどうするか」が課題になる。2月某日、A店の閉店前と開店準備とを現場で取材した。
午後10時少し前。店を訪ねると、履行補助者の女性とアルバイトの女性が接客や品出しをこなし、Bさんはバックヤードで事務をとっていた。午後10時〜午後11時まではアルバイトとBさんの2人シフトで、同時刻から閉店まではBさん1人になる。
同店は、レジの並びのカウンター上で唐揚げ、鶏竜田揚げ、フランクフルト、春巻き、アジフライなどを店内で調理し売っているが、閉店のしばらく前に半額に値下げ。午後11時30分には完売していた。賞味(消費)期限の少し前に設定された販売期限が近づくと、お弁当、おにぎり、サンドイッチなども順次値下げ。期限前には半額にし、ほとんど売り切る。
閉店間際に入ってきた男性客は、お弁当などを買いながら「ちょうど仕事が終わったところで。見切り(値下げ)は助かりますね」と話した。A店では以前から見切り販売を実施して廃棄を減らす努力をしていたが、男性は「時短するなら、閉店前は見切りもしているだろう」と期待して来たという。
閉店直前、Bさんは高さ90センチほどの保冷ボックスに保冷剤を入れていく。しばらくするとボックス内の温度は氷点下になる。このボックスは、6カ月の実証実験を経て時短店になった際、本部が貸与してくれたものだ。閉店時、納品に来たトラックの運転手は静脈認証で店内に入り、このボックスにセブンプレミアムの惣菜やデザートを入れる。
Bさんは次に、窓の内側に設置されたロールスクリーン(カーテン)を下ろし、看板の灯(あか)りを消してドアのカギを締めた。防犯上の理由で店内は点灯したままだが、看板が消えロールスクリーンが下りると、不夜城のような店は、夜の闇に静かに包まれた。
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