日本の若者が「それでも」韓流に熱狂するワケ――中高年が理解できない深層心理:誤解だらけの日韓関係を問う(5/5 ページ)
若者を中心にいまだ根強い韓流ブーム。反韓感情も少なくない中高年世代とは裏腹の「憧れの国」に。日韓関係を長く取材してきた毎日新聞記者が真相に迫る。
メディアや大人の「嫌韓」への疑念
テレビでは韓国の悪口ばかり流れ、同級生からも「韓国なんて悪い国をなんで好きなの」と言われた。
母親と一緒にソウルを旅行してみると親切にしてくれる人ばかりで、ドラマを観ても一方的に日本を嫌いと言っているわけじゃないと感じたけれど、「韓国の文化を好き」とは言いづらくなった。ネットで悪口を書いている人がいるのを見ていたから、大人の前では「この人も本当は韓国嫌いなんじゃないか」と顔色をうかがうようになってしまった。
それでもメディアや大人たちの話は一方的だと感じ、韓国側の言い分も知りたいと思ったという。大学生になる頃には韓国語を読めるようになって、自分で確かめたい。そう考えて中学2年生の時から自宅近くの韓国語教室に通った。
その甲斐あって大学では韓国語の上級クラスに入った。「上級クラスにいる学生たちは単純にK‐POP好きとかではなくて、文学やメディアなどにも関心を広げている」という。
筑波さんは第3次韓流ブームについて、「第2次ブームの時に乗れなかった子も第3次では乗ってきた感じ。中学校の時に『韓国なんて大嫌い』と言ってた子が、久しぶりに会ったらバンタン(防弾少年団の略称である「防弾」の韓国語読み)のファンになってて驚いた。第2次の頃の韓流にはまだマイナーという感じがあったけれど、今はもう当たり前のジャンルになった感じ」と話す。
さらに、日韓の政治的対立について「お互いが感情的になりすぎてこじれてる。私も、政治的な話では韓国の主張がおかしいと思う点があるけれど、それと文化は別のもの。政治的な対立が原因で民間交流を中止するなんて馬鹿らしい話で、政治に振り回されすぎだと思う」と話していた。
「観光は平和へのパスポート」という言葉がある。国連が1967年を国際観光年に指定した際に制定したスローガンだ。大学で観光について学ぶ筑波さんは、この言葉を引きながら「実際に行き来することで誤解や偏見をなくすことができるんです」と力説するのだった。
著者プロフィール
澤田克己(さわだ かつみ)
毎日新聞外信部長。1967年埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。在学中、延世大学(ソウル)で韓国語を学ぶ。1991年毎日新聞社入社。政治部などを経てソウル特派員を計8年半、ジュネーブ特派員を4年務める。2018年より現職。著書に『韓国「反日」の真相』(文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)など多数。
関連記事
- 中国人訪日客は「きのこの山」より断然「たけのこの里」派!? 日本スイーツ人気の謎
中国人の間で日本スイーツが人気だ。特に「きのこの山」より「たけのこの里」がSNSで話題だという。人気の裏にはちょっと意外な事情が……。 - 国の支援も手遅れ……「就職氷河期第一世代」の女性が味わった絶望とは
今更ながら国が支援を始めた就職氷河期世代。その女性たちが味わった就職や仕事の苦難は実は多様だ。「第一世代」の女性は果たしてどんな人生をたどったか? - 脱24時間で息吹き返したセブン加盟店、密着ルポで迫る「時短営業の意外な現実」
コンビニ業界に脱24時間化の激震が走る。最大手・セブンのとある時短実施店に筆者が密着ルポ。意外な実像から浮かび上がる「コンビニの未来像」とは。 - 中国人の間で日本の「のり弁」が話題沸騰 SNS分析でその「意外な真相」を追う
中国人向けSNSで日本の「のり弁当」の投稿数が急増している。背景には日本人の知らない「不思議な事情」が。SNSと中国市場の分析から迫る。 - 2020年「正社員の年収激減」の恐怖 賃下げの意外なターゲットとは
2020年から正社員サラリーマンの年収が激減する恐れ。ポイントは同一賃金同一労働の施行だ。意外なモノが「賃下げ」のターゲットになる可能性が。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.