新型コロナ感染拡大でも、日本が「中国人」を受け入れ続ける理由:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
日本国内でコロナウイルスの感染拡大が本格的に始まった。アメリカやオーストラリアなどは中国全土からの外国人入国拒否という対応をとったのに、なぜ日本は同じことができないのか。筆者の窪田氏は、できない理由として……。
中国人の入国制限に消極的な理由
新型コロナが、インフルエンザやSARSと決定的に違うのは、感染した人が症状が出ないまま、さらに感染を拡大させている点だ。そのため、一部の専門家からは、これまでの感染症のように自然に感染のピークを迎えて終息をすることなく、思いのほか長期化するのではないかという指摘も出ている。
そうなると当然、7月24日の東京オリンピック2020が危なくなってくる。症状はないものの、感染している恐れの高い中国人の観客がわんさかと訪れて、しかも日本人の観客の中にもわんさかといるかもしれない。そんな「サイレントパンデミックの震源地」に、やって来たい外国人が果たしてどれだけいるのか。
ヨーロッパ、ロシア、アフリカ、南米など感染者が少ない地域の人たちからすれば、「なんでわざわざそんな危ない場所に行かなきゃなんねーんだよ」というのが本音だろう。事実、既に欧米では日本旅行を控えるような動きや、現地の日本人をはじめとしたアジア人を「病気持ち」のように扱う差別が問題になっている。
そこに加えて、開催が危ないのは、オリンピックに対する「温度差」もある。日本では「オリンピック」は全国民が「感動をありがとう!」と熱狂する国家イベントだが、世界のほとんどの国では、そこまで大騒ぎをしない。というよりも、サッカーワールドカップなどに比べると、「え? そんなのやってたんだ」とシラけた反応をする人も少なくない、マイナーイベントなのだ。
それは裏を返せば、「今回は新型コロナで中止にしましょうか」となってもぜんぜんヘーキという国のほうが圧倒的に多いことでもある。こういうシビアな現実を踏まえると、日本政府が取るべき方針は決まっている。中国政府とガッチリとタッグを組んで、「いやいや、新型コロナなんてたいしたことないっすよ、みんなヒステリックに騒ぎすぎですって」と「火消し」を図ることだ。
つまり、安倍政権が中国人の入国制限に消極的なのは、習近平への忖度でも、中国の人たちの人権を配慮したわけでもなく、「五輪開催」という自国のメリットによるところも大きいのだ。
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