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アマゾンを超越し続ける「ザッポス」という存在(3/4 ページ)

今から10年ほど前に『ザッポスの奇跡』という本を書いた。当時、アメリカのビジネス界に旋風を巻き起こしていた「ザッポス」という靴のネット通販会社の「企業文化戦略」についての本だ。ザッポスはどのようにして、あのアマゾンに「負け」を認めさせるに至ったのか。

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「人が要らない」ネット通販へのアンチテーゼ

 ネットの普及が始まった頃の「ネット通販ビジネス」の、起業家や投資家にとっての価値提案とは、「人が要らない」ことだった。そして店舗もいらない。つまり、コストを最小限に抑えられる。だから、当時はコンタクトセンターを持たないネット通販ビジネスも多かった。

 しかしザッポスは、サイトの左上に大きな文字でフリーダイヤル番号を表示して、「いつでも電話をかけてください」と宣伝したのだ。

 一般的に、ネット通販の受注チャネルというのは、「ネット」がメインである。ザッポスもこの類にもれず、今も昔も、ネット経由での受注が全体の95%程度、電話での受注は5%未満だ。売上を創出しないコンタクトセンターは、「コスト・センター(コストを生むだけのもの)」のようにも見える。だからごく一般のネット通販会社はコンタクトセンターに力を入れていなかった。たとえばアマゾンを例にとれば、顧客はアマゾンに電話をかけることはできなかった。(今はかろうじてサイト内のお問合せフォームから顧客サービスに連絡すると折り返し電話をしてくれる仕組みがある)

 でも、ザッポスは、顧客がわざわざ電話をかけてきてくれる機会を、またとない好機だと考えた。「売り上げ」は獲得できないかもしれない。でも、顧客を感動させるWOWのサービスを提供して、ごく個人的かつ感情的なつながりを築き、「生涯顧客(ライフタイム・カスタマー)」を獲得することができるのならどんなコストも安いものだ。

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