ここにきて、プロ野球以外でもIT企業が続々とスポーツビジネスに参入するワケ 「ITスポーツ第2世代」の狙いに迫る:池田純のBizスポーツ(2/3 ページ)
楽天、ソフトバンク、DeNAに続き、IT企業のプロスポーツ参入が増えている。メルカリ、ミクシィ、サイバーエージェントら「ITスポーツ第2世代」の狙いはどこにあるのだろうか? そして、どのような未来が待っているのか? 横浜DeNAベイスターズの初代球団社長、池田純氏が斬る。
スポーツは“分かりやすいメソッド”
今やスポーツ事業が“本業”といっていいほどの利益を上げているDeNAも、もともとの狙いがそこにあったことは公然の事実です。その効果として、分かりやすい一つの例が新卒採用です。学生が「行きたい」と思っても、親が知らない会社には行かせない。自立意識を育む教育がなされていないといわれる昨今、親の影響力は以前より強くなっていて、無視できないものとなっています。
最近、有名私立中学校で進路に関する講演を頼まれることも多くなりましたが、そこでちょくちょく耳にするのが「みんな良い子だし、賢いのだけれど、すごく親の影響力が強い。自分で挑戦したり、自分で考え判断したりすることの大切さを伝えて欲しい」ということ。学校のカラーにもよるのですが、「挑戦しないともったいない、挑戦しないと損」という考え方の下で育ってきた私は、教育現場の生の声を聞いて改めて日本の現状を実感させられました。
そうした社会において、親世代に認知されていない新興系のIT企業が新卒採用を思惑通りに進めることに支障が生じることもあるでしょう。Google、Apple、Facebook、Amazon……いわゆる「GAFA」ほどの巨大事業者になれば話は別ですが、まだまだそうではないIT企業の中には、存在や社会的意義を向上させ、明確に世の中に認識させたいという思いを常に抱いている企業も多く存在します。
そこで、スポーツはすごく分かりやすい“メソッド”になり得ます。例えばDeNA。プロ野球参入で大きく認知度を高め、今や大学生の就活ランキング上位の人気企業になりました。しかし、ベイスターズの経営に参画した2011年当時、横浜での認知度は、実に寂しいものでした。私は「東京から来た若造社長」などと言われ「お前のところは何をやっている会社なんだ」と聞かれることもしばしば。「DNA」と誤認され、「DeNA」の小さい「e」を書いてまでくれる人すら皆無でした。それが今や「DeNAベイスターズ」と多くの人が呼んでくれるまでになるとは、当時は誰も想像すらしていませんでした。球団名を巡るやりとりの中で、キーマンの一人が携帯電話向けゲームサイト「モバゲー」を「モガベー」と言い間違えたことがメディアで話題になったこともありました。それも当時の会社の認知度の低さの表れといえるでしょう。
ここまでをまとめると、新興系のIT企業が、こぞってスポーツに進出し、球団やチームを持ちたいと思う要因は、主に「スポーツビジネスはお金にできるという認識」「ビジネスを含む社会的地位の獲得・向上をもたらすスポーツの“魔力”」の2点に集約されるのではないでしょうか。
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