2015年7月27日以前の記事
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三菱ケミカルHD小林喜光会長「リスクを取らないトップは去れ」三菱ケミカルHD小林喜光会長が斬る(後編)(3/5 ページ)

経済界を代表する論客の1人、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長に、日本が「技術立国」であり続けるための対策や、その状況下で日本企業がどのように生き残っていけばいいのかを聞いた。小林会長は政府の科学技術政策の基本方針を決める総合科学技術・イノベーション会議の議員でもある。インタビューの話題は、トップがリスクを取らない日本の企業文化への批判に加え、大学や企業の研究の在り方、研究者の目指す方向性など多岐にわたった。

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横並び主義の打破 DX創出には外部人材が必要

――平成になってからの30年間、成熟期を迎えた日本経済ではGDP(国内総生産)がほとんど伸びませんでした。その結果、国民の間には、諦めにも似た「宿命的な人生観」が広がっているようにも思えます。

 確かに日本企業には総花主義、横並び主義、えせグローバリズム、事なかれ主義が蔓延(まんえん)して、妬みや嫉みが横行しています。こういうものから決別して、リスクを取る経営が求められていますね。日本だけで満足する「井の中の蛙」になっては駄目なのです。

――貴社では早くから他社の優秀な人材を中途採用しています。特に人事部門で外部人材の活用が目立っていますが、その理由は。

 先端技術・事業開発室という部署では、デジタルトランスフォーメーション(DX)、コーポレートベンチャー活動、新規市場開拓を通じて、既存事業の視点を超えた機会を生み出し、多数の事業部門を成長させる活動をしています。

 グローバルな視点によって新しい技術・ビジネスモデルの構築に取り組みますから、部署のトップには、米国人の研究者や日本IBMに在籍した技術者に来てもらっています。事業の構造を変える、あるいは社員のマインドを変えるためには、やはり外部人材の活用が必要だと考えているからです。

――1月に経団連が年功序列・終身雇用制度や新卒者の一括定期採用の見直しを提言しましたが、どう見ていますか。

 腰の重かった経団連も世界で勝つためにと考えて、方向転換をしたのでしょう。当社は採用については数年前から一部通年採用を実施していますが、今後は本格的な移行を検討していく必要があるでしょう。必要なときに必要な人材を採るのは当然なことです。そうしないと、日本は必要な人材を獲得することができずにガラパゴス化してしまう恐れがありますから。

 40年以上も昔のことですが、私自身も(新卒採用の時期ではない)12月に当時の三菱化成(現三菱ケミカル)の人事部に電話をして採用の直談判をした経験があります。自分が書いた論文を3本出して、それをもとに研究所の所長に面談をしてもらい、採用が決まったくらいです。新卒一括採用は時代にそぐわない。若い人もその制度にとらわれずに自分の生きる道を切り開いていってほしい。

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小林会長は採用の時期ではない12月に会社の人事部に電話を掛け、採用の直談判をした

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