「新型コロナには一致団結で!」と叫ぶ組織が、残念な結果を招く理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
新型コロナウイルスの対応について、各国から批判の声があがっている。クルーズ船に3711人を閉じ込めたこと、乗客を下船させたこと、公共交通機関で帰宅させたこと。日本には“優秀”な官僚や感染対策の専門家がいるのに、なぜこのような事態を招いてしまったのか。
「おかしい」と声をあげる者はいない
ほとんどの組織は悪事を働こうと思って「隠ぺい」や「改ざん」をするわけではない。みな「危機」と向き合って、それをどうにか対応しようと考えてやってしまう。
もちろん、その中には保身や責任逃れなどもあるが、多くは「組織のため」である。こうしている今も現場で汗をかき、問題解決のために寝る間も惜しんで働く同僚や仲間たちのため、彼らを「一致団結」させるため、情報の公表を拒み、うそをつく。だから、こうした不正に手を染める人たちに実際に会ってみると、「マジメな組織人」「善良な市民」ばかりなのだ。
今回、岩田氏の「告発」を受けて、ハフィントンポスト日本版に、現場の医療従事者から「声をあげられないスタッフの代弁をしてくれた」という感謝の声が寄せられた。また、厚労省の職員や検疫官からも感染者が出ており、岩田氏の指摘が妥当であったことが徐々に明らかになっている。
岩田氏は2時間たらずで「船内の異常さ」を見抜いている。ということは、現場にいた専門家をはじめ多くの医療従事者はこの危機管理がヤバイと気付いていたはずだ。しかし、彼らは声を上げなかった。それは決して「怠慢」ではなく、「一致団結」のためである。
問題企業でも、このようなムードはまったく同じだ。みな口々に「ヤバいよな」「ウチの会社も終わりだな」とささやくが、「おかしい」と声をあげる者はいない。危機に向かって、全社で一致団結している中で、士気を乱すような者は、魔女狩りのように吊し上げられる。だから、「権威」の前では黙って下を向くしかない。そして、みな口をつぐんだまま、破滅へと向かっていくパターンが、企業危機管理の現場では圧倒的に多い。
この構造は何かに似ているなと思っていたのだが、最近それが何かようやく気付いた。80年前の日本だ。
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