円安・株安はなぜ起きた? 日本はもはや「スタグフレーション入り」したのか:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
「円安になると株価は上がる――」。この法則がいまや崩れようとしている。景気が後退しているにも関わらず物価が上昇する状態を、スタグフレーションという。通常、景気が悪い中で物価が上がる場面は限定的であるが、今回においては消費税の増税による半ば強制的な物価の押上げが、これを現実のものにするかもしれない。
日本はコロナでスタグフレーション入り?
景気が後退しているにも関わらず物価が上昇する状態を、スタグフレーションという。通常、景気が悪い中で物価が上がる場面は限定的であるが、今回においては消費税の増税による半ば強制的な物価の押上げが、これを現実のものにするかもしれない。
現に、総務省が公表する消費者物価指数(コア指数)は34カ月連続でプラスとなっており、直近では前年同月比で0.8%上昇している。その一方で、物価変動の影響を除いた実質賃金は19年で前年比マイナス0.9%だ。
堅調な需要が要因でインフレーションが起こることは好景気であることを示唆し、調和のとれた状態で賃金と物価が上昇しやすい。その一方で、スタグフレーションでは賃金の低下と物価の上昇が同時に発生しやすくなる。70年代にはオイルショックによる不景気下の原油価格高騰で、スタグフレーションが発生した。
それでは、日本はすでに景気後退期にあるといえるだろうか。2月17日に公表された19年第4四半期GDP(国内総生産)の速報値を確認すると、前期比でマイナス6.3%(年率換算)と、08年のマイナス9.4%に次ぐレベルの下げ幅となっていた。
仮に次回、20年第1四半期のGDPがマイナスとなった場合、2四半期連続のマイナス成長となる。そうなると、各国の市場参加者から「日本は景気後退している」と認識される可能性が高い。
次回のGDPを語る上で最も懸念すべきは、コロナウィルスによる経済活動の停滞懸念だろう。国内でも数百人規模の感染がみられていることもあり、巷(ちまた)ではイベント中止や外出を控える動きが相次いでいる。
25日には、Jリーグの公式戦が来月まで延期されることが発表された。イベントの中止・延期は、チケット返金による損害だけでなく、スポンサーのマーケティング機会も失われてしまうなど、見た目以上の経済的損失が発生する。ほかにも、同日に愛知県蒲郡市の旅館である「冨士見荘」が破産申請するなど、「コロナ倒産」事例も国内で現れてきた。
次回のGDPはコロナ影響でさらに厳しいものに
このような状況に見舞われている20年第1四半期のGDPは、今回公表分にまして厳しいものとなるだろう。つまり、数字が発表されていないだけで、足元ではすでに景気後退下にある可能性が高い。
したがって、現段階において、日本は物価の上昇と景気の後退が同時に発生しているスタグフレーション入りしたともみられる。もっとも、オイルショックなどに見舞われた70年代のスタグフレーションと比較すると、その推移は比較的緩やかになるだろう。また、仮にコロナウィルスの短期封じ込めが成功すれば、03年にみられたSARS相場のように、直近の高値を超えるような反転相場を迎える可能性もある。
しかし、仮にコロナウィルスの封じ込めが長期化すれば、緩やかなスタグフレーションから本格的なデフレに再び陥る危険性も高い。
今回のケースにおいて、日本の景気後退が現実のものとなるかどうかは、私たちにもかかっているといっても過言ではないだろう。コロナウィルスはれっきとした災害であるが、地震などと異なり、被害の拡大までに時間の猶予がある災害でもある。防疫意識を高め、感染の拡大を少しでも抑えることが、今後の日本経済の先行きを左右するのではないか。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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