55億円をだまし取られた「地面師事件」が発端 積水ハウスで勃発した“ガバナンス巡る激突”の深層:磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(3/3 ページ)
東京・西五反田の土地に絡んで、積水ハウスが偽の所有者との売買契約を結び、55億円をだまし取られた「地面師事件」――。この事件を発端として和田勇・前会長兼CEOと現経営陣との間で“ガバナンス巡る激突”が繰り広げられている。経営権を争う戦いから浮かび上がる「経営者の条件」とは。
「経営権を争う例」が増える
GPIFは議決権を直接には行使しないが、運用委託先ファンドを通じて議決権を行使している。18年4月から19年3月の間の株主総会では、会社側の提案に対しても10.1%に当たる1万4731件で反対票を投じているほか、株主提案281件のうち4.3%に当たる12件で賛成票を投じていた。
大株主には、「SMBC日興証券」(2.33%)や「三菱UFJ銀行」(1.97%)、「第一生命保険」(1.76%)などが名を連ねている。国内のこうした金融機関の賛否がどうなるかも注目される。
4月の株主総会に向けて、会社側も和田氏側も、メディアなどを使って「自らのガバナンスの正当性」を訴えることになるだろう。
6月には3月期決算企業の株主総会が集中する。3月後半から4月にかけて、こうした企業に「株主提案」が数多く出されることになりそうだ。19年6月のLIXILグループの株主総会では、潮田洋一郎取締役会議長(当時)に社長兼CEOを解任された瀬戸欣哉氏が株主提案を出し、海外ファンドなどの賛成を得て、取締役に復帰した。
会社側と株主提案側で経営権を争う例が増えることになりそうだ。会社で不祥事などが起きれば、間違いなく株主からガバナンスを問われる時代になり、絶対権力者と思われてきた社長や会長も安閑とはしていられなくなってきた。
著者プロフィール
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP )、『2022年、「働き方」はこうなる 』(PHPビジネス新書)、共著に『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP )などがある。
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