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新日本プロレスのプロ経営者・メイ社長が「リストラせずにV字回復できた理由」――必要なのはコストカットよりも“人材とブランドの育成”セルリアンブルーのプロ経営者【後編】(1/6 ページ)

過去最高の売り上げを更新している新日本プロレス。率いるのはプロ経営者のハロルド・ジョージ・メイ社長だ。経営悪化に苦しむ企業をV字回復させてきたメイ社長には、多くのプロ経営者、特に外国人経営者との大きな違いがある。それは社員をリストラすることなく、V字回復を実現してきたことだ。後編では、メイ社長にリストラしない経営と、日本企業の課題と可能性について聞いた。

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 過去最高の売り上げを更新している新日本プロレス。率いるのはプロ経営者のハロルド・ジョージ・メイ社長だ。サンスターの執行役員、日本コカ・コーラの副社長を経て、タカラトミーでは社長として、わずか数年で業績をV字回復させた。2018年に社長に就任した新日本プロレスが躍進を続けている秘密は前編「「6年で売り上げ5倍」「売上高過去最高の54億円」 プロ経営者・メイ社長が明かす新日本プロレス躍進の秘密」でお伝えした。

 経営悪化に苦しむ企業をV字回復させてきたメイ社長には、多くのプロ経営者、特に外国人経営者との大きな違いがある。それは社員をリストラすることなく、V字回復を実現してきたことだ。

 メイ社長がリストラすることなくV字回復を実現できる理由は、外資系企業で15年、日本企業で15年間勤務してきた経験から、海外と国内の両方の立場から、日本企業の特徴を熟知している点にある。後編では、メイ社長にリストラしない経営と、日本企業の課題と可能性を聞いた。

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ハロルド・ジョージ・メイ 新日本プロレスリング社長兼CEO。1963年オランダ生まれ。8歳から13歳まで父親の仕事の関係で横浜で生活する。その後、インドネシアへ移り、大学からはアメリカへ。ニューヨーク大学修士課程修了。ハイネケン、日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)、サンスター、日本コカ・コーラ副社長、タカラトミー代表取締役社長を経て現職。アース製薬社外取締役。著書に『百戦錬磨 セルリアンブルーのプロ経営者』(時事通信社)

リストラしないプロ経営者

――メイ社長のようなプロ経営者は、日本企業ではまだ珍しい存在です。特に、外国人のプロ経営者といえば、金融商品取引法違反や会社法違反の罪で起訴されながらレバノンに逃亡した、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏のイメージが強いと思います。ゴーン氏は1999年に日産の社長に就任して、国内5工場の閉鎖と2万人を超える人員削減により、一時は日産をV字回復させました。プロ経営者と言えば、リストラをするイメージがあります。ただ、メイ社長は考え方が違うそうですね。

 私は赤字状態だったタカラトミーのV字回復を実現しましたが、一切リストラはしていません。ボトムライン(純利益)ではなく、トップライン(売上高)を伸ばす方針のもと、1人も社員を解雇することなく、業績を大幅に改善できました。

 多くのプロ経営者が「コストカッター」となって、リストラなどの合理化によって収益を改善する傾向にあります。そのこと自体は、間違っていないと思います。特に欧米人の経営者はドライで決断が早く、無駄を省いてスピーディーに収益を改善できるでしょう。日産もリストラによって、確かに一時的に業績は改善しました。

 コストをカットすることも必要で、否定はしません。しかし、時間をかけて人やブランドを育てることも大事です。そのために必要なのは、組織の再構築と育成だと考えています。

――リストラをせずに、組織を再編するということですか。

 ビジネスはスポーツのフォーメーションと同じで、最適な人材を最適な場所に常に配置することが大事です。社内の人員配置だけでなく、10年前、20年前に作った子会社がまだ存在する必要があるのかといったことも考えて、無駄があれば組織を再編します。

 日本ではリストラは人員をカットする意味だと捉えがちですが、実はそうではありません。リストラは英語のrestructuringの略語で、本来の意味は再構築です。100ある商品のブランドを60に集約することも立派なリストラです。単に無駄を切り捨てるのではなく、無駄になっている部分を見つけ出して再編することが必要だと考えています。

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新日本プロレスに所属し、【100年に1人の逸材】と呼ばれる棚橋弘至。第56代IWGPヘビ−級王者時代には当時の歴代最多防衛記録のV11を達成。早い段階からプロモ−ションの重要性に気付きブログを開設。地方プロモ−ションなども積極的に行ってきた
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