2020年に変わる3つのフィンテック関連法改正 Fintech協会理事の落合孝文氏インタビュー:フィンテックの今(4/4 ページ)
2020年はフィンテック関連でどのような法改正が進むのか。送金サービスを提供する資金移動業が3種類になり、1つの登録で証券、保険の商品などを販売できる「金融サービス仲介業」が登場。そして、給与を銀行振り込み以外で支払える、ペイロールカード解禁が想定される。
給与を銀行振り込み以外で支払える、ペイロールカード解禁
――大手企業の参入だけでなく、政府が強力に後押ししたこともあり、19年はキャッシュレス元年と呼ばれました。今後、キャッシュレスを促進するような制度変更も予定されているのでしょうか。
落合 20年からは給与を資金移動事業者の口座に直接振り込めるようにするペイロールカードの制度を、労働基準法に組み込む法整備がされる見込です。
これまで労働基準法では原則、給与は現金での直接払いか銀行口座等の一定の既存金融機関への振り込みが義務付けられていました。デジタル通貨での給与支払いが可能になれば、消費者は銀行口座から資金を移す手間をかけずに、そのままキャッシュレス決済を利用することができるようになります。
デジタル通貨での給与支払いは20年6月を目標に法整備の検討がされる予定です。ただ、資金移動業者が破たんした場合、現在の供託制度を前提にすると債権者に資金が配当されるのは数カ月後となっています。給与が数カ月も遅配されるのは問題だ、という点が厚労省などから指摘されており、リアルタイムに返済されるようなスキームを作る必要があります。現時点で、保証会社と保険会社を組み合わせることによる早期支払スキームは、概ね整理できつつあります。
――テクノロジーを使った合理化についてはどのように推進されるのでしょうか。
落合 クレジットカードの発行について少額の場合(登録少額包括信用購入あっせん業者)の参入要件の緩和等がされます。少額の場合の資本金や純資産の参入要件緩和とともに注目されるのが、与信審査の要件合理化です。
現在の支払可能見込額調査は定型的な与信判定がルール化されていますが、新しい制度では、認定事業者については、与信審査にあたりさまざまな情報を分析して、与信に問題がないかを判断できるようになります。例えば、個人の取引や行動の記録を取得できるようなアプリのデータを参照しつつ、返済できる可能性が高いとAIなどで判定できる場合に審査を通す、などが考えられます。与信にAIを活用する事例は海外・国内問わず進んでおり、有望な分野だといえるでしょう。
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