フィンテックは日本の個人投資の起爆剤に? Fintech協会理事の神田潤一氏インタビュー:新連載・フィンテックの今(1/4 ページ)
日本の個人金融資産は1800兆円に上るものの、依然として現預金が占める割合が高く、十分な資金が投資には回っていない。個人の資産形成が十分に進まない現状を、フィンテックがどう変えるのか。Fintech協会理事の神田潤一氏に聞いた。
日本の個人金融資産は1800兆円に上るものの、依然として現預金が占める割合が高く、十分な資金が投資には回っていない。個人の資産形成が十分に進まない現状を、フィンテックがどう変えるのか。Fintech協会理事の神田潤一氏に聞いた。(聞き手はフリーライターの中尚子)
――日本は個人金融資産が1800兆円超あるものの、投資への振り向けが不十分との指摘もあります。
神田潤一氏(以下、神田) 日銀の資金循環統計によると、2019年9月時点の個人金融資産は1835兆円でした。このうち現金・預金の割合が5割超を占めています。
政府は「貯蓄から投資へ」と旗を振っているものの、リターンを生む投資に資金が十分に回っていないのが実情です。低金利が続いており、預金を続けていても十分な資産形成ができない点も問題だと考えています
――なぜ日本では個人による投資が盛り上がらないのでしょうか。
神田 1つ目の理由としては、バブル経済の崩壊後、株価が長期低迷した結果、投資家がリスクを強く意識するようになったことが挙げられます。この期間は株式だけでなく、外国債券の利回りについても円高が続いたことで悪化しています。その結果、価値が減らないと判断した預金に個人は資金を振り向けたのでしょう。日本は預金保護がしっかりしているので、預金だけは安全だという認識が強くなりがちです。
2つ目の理由としては個人の金融資産が60歳代以上に偏っていることも挙げられるでしょう。個人資産は増加傾向にありますが、将来のことを考えて資産形成を始めなければいけないはずの30〜40歳代に限ってみると貯蓄残高が減少しています。
最後に、大手証券など既存の金融機関が長らくビジネスモデルを変えてこなかったことも理由の一つでしょう。既存の金融機関にとって、メインの顧客は多くの資産を保有している高齢者です。そのため、若い世代でも始めやすいような新しい形のサービスなど提供する動きはどうしても生まれにくかったと考えられます。
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