フィンテックは日本の個人投資の起爆剤に? Fintech協会理事の神田潤一氏インタビュー:新連載・フィンテックの今(2/4 ページ)
日本の個人金融資産は1800兆円に上るものの、依然として現預金が占める割合が高く、十分な資金が投資には回っていない。個人の資産形成が十分に進まない現状を、フィンテックがどう変えるのか。Fintech協会理事の神田潤一氏に聞いた。
――「投資よりも貯蓄」という傾向は今後も続くのでしょうか。
神田 人生100年時代といわれる今、老後の資金を準備するためには現預金だけでは不十分です。投資による長期的な資産形成を考えていく必要は確実に高まっていくでしょう。
現在でも高齢者で投資している人が多いのは、バブル期などに周りの人が株式などに投資した結果、高いリターンを得ている様子を見て、自分でも経験してきたからだと思います。一方で、若い世代は投資している人が周囲に多くいません。どんな人がどうやって投資してどのように資産を形成しているか。投資のリアルや成功体験についての情報が発信されれば少しずつ変わってくるのではないでしょうか。
――そのような課題がある中で、フィンテックはどのような役割を果たしていくことができますか。
神田 まずは新しい形の投資サービスが挙げられます。例えば、キャッシュレス決済で買い物した際のおつりを投資に回す「お釣り投資」や、「ドローン」「VR(仮想現実)」など、注目のキーワードを選ぶとそれに関連する株式銘柄が提示されてそれに投資することができる「テーマ投資」などがあります。また、金融アルゴリズムを基に個人のリスク許容度にあわせてポートフォリオを自動で組む「ロボットアドバイザー(ロボアド)」や、単元未満株を売買できる「少額投資」など、さまざまなサービスが提供され始めています。
ロボアドは自動的に資産のリバランスをしてくれるため、金融のリテラシーが高くない人でも始められます。また、経験がない人にとっては面白い銘柄を見つけるのも難しいですが、テーマ投資であればニュースなどで話題になっている会社に手軽に投資することもできます。何を選べばいいのか、考えるのが楽しいのでゲーミフィケーションの側面もあります。
また、こうしたサービスはどれもスマホを使ってオンラインで手続きをほぼ完了でき、少額で始められる点が大きな特徴です。誰もが肌身離さず持っているスマホは、株価や資産残高をリアルタイムで見られるため、投資するためのデバイスとしてはうってつけです。これまで投資にあまり興味がなかった若い世代にとって、投資のハードルを下げ、投資の面白さを身近に感じることにつながるでしょう。
アプリなどの操作が直感的で分かりやすいのも特徴です。フィンテックサービスを開発しているスタートアップ企業は概ね意思決定のスピードが速いため、デザインや操作性などを柔軟に変更し、投資家が使いやすい形にブラッシュアップしていくことも得意としています。
関連記事
- 投資のきっかけは仮想通貨? なぜ若者はビットコインを買ってしまうのか
「投資のきっかけは仮想通貨のリップルを買ったことです」。金融庁は貯蓄から投資へのシフトを促し、各社が若年層向けの投資商品や金融教育を推進している。ところが、若者にとって投資の入り口になっているのは皮肉にも仮想通貨だ。 - 20代女性投資家の41%が、2019年に「投資デビュー」
老後2000万円問題などの問題提起もあり、これまで投資に無縁だった若年層が関心を持った2019年。スパークス・アセット・マネジメントが実施した調査によると、20代女性投資家の41.2%が、今年投資を始めた「投資デビュー組」だったことが分かった。 - 投資を始める分岐点、年収と資産「500万円の壁」は崩れるか?
現在の年収レベルや、資産の運用で老後資金を果たして作れるか。これまで、「500万円の壁」と言われてきたものが、積み立て投資の普及などにより、変わってくるかもしれない。フィデリティ投信の調査より。 - 高まる資産運用意識 お金があっても踏み出せない理由
2019年夏の「老後2000万円問題」を契機に、資産運用意識が高まっているようだ。メットライフ生命が実施した調査によると、資産運用意向のある人は51.0%と18年の調査よりも3.5ポイント増加した。しかし、実行している人は26.2%と前年から0.5ポイントの伸びに留まっている。 - 若者の「投資」事情 ハードルをこえるきっかけは「学びと自信」
2019年は若年層の投資への関心が高まった年だ。一方で、実際に投資に踏み出す人は少なく、特に若年層の足が止まっている。「投資するだけの資金がない」という理由は減少しており、「何をすればいいのか分からない」「いろいろ勉強しなくてはならないから」という理由が増加中。では、投資に踏み切った人は何がきっかけだったのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.