新型コロナでも日本企業が社員に「テレワークさせなかった」真の理由:正社員2万人調査から分析(2/2 ページ)
正社員のテレワーク実施率が13%止まりと判明。新型コロナでも改まらない日本企業の制度不備。専門家がその真因を分析する。
日本の人事制度がテレワークで失敗する訳
背景にあるのは、日本独特の人事評価方式のようだ。「欧米型企業と違い、日本企業のほとんどは『成果』と『プロセス』の両面を評価する。成果主義だけでなく、従業員が『頑張った点』『挑戦したこと』も評価する仕組みだ」(小林さん)。
一方、上司不在の在宅勤務では、この「プロセス」部分が完全に見えなくなる。「評価制度としては片腕をもがれたようなもの。現状の評価制度でテレワークすれば、上司も部下も評価の“不完全感”をためやすい」(小林さん)。日本企業がテレワーク化に二の足を踏んだり、制度があっても有名無実化する根本的な原因がそこにあるという。
ただ東京などの都市封鎖(ロックダウン)もささやかれる中、やはりテレワークの浸透は急務だ。小林さんは「今は応急処置的な段階だが、日本も今後は一気にテレワーク化が伸びるかもしれない。その際、制度設計が伴っていないひずみが出てくるはず」とみる。
テレワークで生じる「格差問題」
特に小林さんが指摘するのが、テレワークによって生じる「格差」だという。例えば、在宅勤務の向き不向きは業界・職種ではっきりと分かれる。運輸や医療・福祉などの業種、現場業と呼ばれる仕事は遠隔化が困難なため、会社間、担当間で「格差」が広がる可能性が高いという。「テレワークがこうした業種や職種間での不平等感を生まない工夫が求められる」(小林さん)。
最後に小林さんが危惧するのが、テレワークの「個人間格差」だ。「特にITリテラシーの程度が如実に表れる。普段PCを使わない人だと、チャットの返信スピードが遅かったり、オンライン会議のたびに音声が出ないこともある」(小林さん)。こうしたITのスキルは急に向上するわけではないという。「従業員のITリテラシーの習得は、(やっておけば)新型コロナの終息後も企業にとって損の無いもの。これらのスキルのベースアップはまさに今、やるべきだろう」(小林さん)。
関連記事
- 「ロックダウン(都市封鎖)は〇日から」――新型コロナデマ、4月1日に悪化の恐れ
新型コロナ関連のデマが悪質化している。特にここ数日はロックダウン(都市封鎖)の内容が浮上。専門家は「大災害時に似た内容になっている」と指摘する。 - 「新型コロナ受けて急にテレワーク」が必ず失敗する理由――第一人者に聞く
新型コロナ対策で急に進むテレワーク。もともと機能していなかった職場では問題発生の危険も。起り得るトラブル、企業と働き手の向き合い方を第一人者に聞く。 - トイレットペーパー買い占め元凶はデマだけか メディア報道に潜む「大罪」――データで迫る
新型コロナの余波でトイレットペーパー買い占めが。デマだけでない本当の元凶とは? メディア記事データや専門家の分析から迫る。 - トイレットペーパー買い占めに走る人を“情弱”と笑えない真の理由
新型コロナで広がるトイレットペーパー買い占め。買ってしまう人を笑う風潮に筆者が苦言。「頭がいい」と思ってる人ほど落ち込むワナがそこにある。 - 新型肺炎でマスク買い占めを「あおる」のは誰? 心理メカニズムに迫る
連日報じられる新型コロナウイルス問題。特に「マスクの品薄、買い占め」が話題に。消費者を買い占めに走らせる心理メカニズムを分析した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.