「人材派遣」は“不遇な働き方”は本当か? データと資料が解き明かす、知られざる実態と課題:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(7/7 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。今回は、誤解の多い人材派遣について「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が解説する。
派遣社員の「規模拡大」ではなく、満足度の向上を
人材派遣業界が本当の意味で社会から認められる存在になるためには、これら悪質な事業者を一掃しなければなりません。そして、不本意型派遣社員へのサービスの在り方を変える覚悟が必要です。派遣事業者の真の敵は、業界の中に潜んでいます。
不本意型派遣社員の比率は、調査によってまちまちです。仮に「3割」だとしたら全雇用者のおよそ0.8%、半分だとしたら全雇用者の1.2%ほど存在することになります。比率で見ると小さいですが、141万人の3割だとしても40万人以上はいる計算になります。世界各国を見ても、派遣社員の比率はおおむね3%前後です。それは派遣というサービスの特殊性を考えればある意味自然なことであり、規模拡大ばかりを考えて全雇用者に占める派遣社員の比率を増やすことを目指すのは無意味です。
本来目指すべきは、不本意型派遣社員をゼロにし、本意型の比率を100%にすることです。派遣以外にも多様な選択肢を提供し、社会の中に本意型の働き手を増やして行くことは、「人材サービス」を提供するあらゆる事業者が取り組むべき最重要課題だと考えます。
かつて「ハケンの品格」が放映された13年前、日本はまだ、リーマンショックも東日本大震災も新型コロナウイルスも経験していませんでした。それら大きな苦難を経験しつつ、新たな時代を迎えている現在。働き方改革が進み、人々の価値観は多様化し、AIやロボットなどによる業務の自動化が促進される中で、「人材サービス」が“歩むべき道”とはどういうものなのでしょうか。次回はそんな観点から考察しつつ、当連載を総括したいと思います。
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