「給与を上げれば退職者は減る」は本当か 経営層の考える「退職対策」と現場の乖離(かいり)が明らかに:勘とイメージ頼みの人事戦略(1/2 ページ)
「給与を上げれば退職者が減る」と考える会社役員は多い。しかし、給与の上昇は本当に退職率を下げる効果はあるのだろうか。トランスの行った調査で役員層と従業員の意識の違いが明らかになった。
「退職者が多いのは給料が低いからだ」――。そう考える企業経営層が多い一方で、「引き留め」をされる側である若手社員の意識は別のところにある。そんな事情がある調査で浮き彫りになった。
調査を行ったのは、人材の活躍する確率や退職する確率を予測するサービスを手掛けるトランス(東京都渋谷区)。「HRファクトフルネス調査」と称して、企業役員が人事戦略を設計する上で勘や経験、常識といったものに囚われていることを明らかにした。今回の調査は経営層に対して行い、その結果を過去にトランスが行った調査と比較することで分析した。
調査によると、「従業員の『給与』を増やすことで退職者は減ると思う」と答えた企業役員は全体の74%を占めた。一方で、トランスが以前実施した、若手社員を対象とした調査では、「給与を増やす回数が多い」ことが退職率の改善に直接つながらないことが明らかになっている。
若手社員を対象とした調査では、1年間での給与上昇回数と退職率の相関関係を分析。退職率が最も高かったのは、上昇回数が「0.75〜1.00」の場合だった。次いで「1.00〜1.25」、「1.25〜」と並ぶ。退職率が最も低かったのは「〜0.25」だった。つまり、給与を増やす回数を増やしても、退職率の改善には直接的に結びつかないことになる。
今回の調査では、こうした若手社員と経営層とで意識の乖離(かいり)があるにもかかわらず、「給与」と「退職」の相関関係を分析したことのある経営層が少ないことも判明。「『給与の増加』と『退職率』の関係を定量的に分析したことがあるか?」に対して、「ある」と回答した人は全体の8%しかいなかった。つまり、イメージや勘でこうした人事戦略が語られていることになる。
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