新型コロナ対策で露呈 「社員から確実に見放される企業」とは?:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
各社で大きく分かれる新型コロナ対策。対処ができなければ「従業員に見放される」可能性も。危機にこそ組織の本質が問われる。
GMOインターネットの決断力
IT大手のGMOインターネットは、国内での感染がそれほど騒がれていなかった1月27日の段階で、すでに国内従業員の約9割にあたる4000人を在宅勤務に切り替えている。どうしても出社が必要なケースに備え、社内に消毒液を配置したり、除菌(厳密にはウイルス除去)がしやすいようエレベーターのボタンにビニールシートを貼った上で、指の第二関節でボタンを押すよう指導するなど非常に現実的、かつ効果的だった。
こうした迅速な行動ができたのは、創業社長である熊谷正寿氏の能力によるところが大きいが、非常時に備え、日頃から組織全体で在宅勤務の訓練を実施してきたことも大きい。こうした実績が明らかになった今、これから就職する若者にとっては、同社のような企業は魅力的に映るだろう。
外食や小売りなど、業種や職種によっては、社員が出社しなければならないケースも多い。こうした場合でも、可能な限りシフトを調整し、満員電車を避ける工夫を実施できる企業とそうでない企業とでは、当然、社員の感染リスクは変わってくる。
差がつく「マスク着用の有無」
また、社員のマスク着用や打ち合わせの実施についても企業の差が大きく出ているようだ。
飲食店や小売店を見回して見ると、全員がマスクをしている店舗とバラバラな店舗、全員がマスクをしていない店舗に分かれている。これは企業の方針や組織の体制による違いと考えられる。
マスクを着用する最大の目的は、もし自身が感染していた場合、同僚や顧客にそれをうつさないためである。だが、近くに感染者がいる場合には、当然のことながら自身の感染リスクを下げることができるし、一般的な感染防止という観点においても、しないよりはした方がよいのは明らかである。ウイルスはマスクの繊維を通り抜けるので効果が無いとの指摘もあるが、それはあまりにも教科書的過ぎる解釈である。
人の口などから出たウイルスを含む飛沫(飛沫なのでサイズは大きい)は、空気中で乾燥し、最終的にはウイルス単体になる。確かにここまで小さくなれば、マスクで感染を防ぐことは不可能だろう。だが現実には、一部のウイルスは空気中のチリや汚染物質などに付着して、もう少し大きなサイズで漂っている。
一般的な経験則として、風邪が流行っている時に、マスクをしないで大掃除をすると風邪をひきやすいというのは、多くの人が理解しているはずである。過度にマスクにこだわるのは考えものだが、少なくとも接客に関係する業界で、マスク着用を全面的に禁止するというのは、労働者にとってリスクが高いはずだ。
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