「コロナショック」がリーマンショック以上に日本を脅かす未来――混乱のドイツ経済から占う:新型コロナの衝撃(3/3 ページ)
経済にも深刻な打撃を与えている新型コロナ。リーマンショック以上という予測も。ドイツの先行例を元にアナリストが分析。
日本が欧州より「コロナショック」を受ける可能性
コロナウイルスの感染拡大で、既に日本でも観光業や飲食業などを中心にさまざまな業種へ悪影響が及んでいる。近年、日本はインバウンド観光を奨励し、地方経済の外国人観光客需要への依存度が高まっていた。そのため、特に海外からの訪日客が激減したことが、日本の地域経済に甚大な悪影響を与えている。
さらに、今夏に予定されていた東京五輪の延期も、さまざまな業種に悪影響を与えている。特に五輪需要を当て込んでいた観光業や小売業は、五輪の開催延期によってそうした需要がしぼむことになった。ほぼ満室を見込んでいた今夏のホテルの稼働状況は今や風前の灯(ともしび)だ。こうした状況はドイツなどヨーロッパに比べても深刻といえよう。
加えて東京で都市閉鎖が実施され、それが長引けば、経済への悪影響はドイツ以上となるかもしれない。コロナウイルスの感染拡大を防ぐ必要がある一方で、経済活動をいつまでもストップさせるわけにもいかない。バランスは大変難しいが、経済を軽視し過ぎると未曽有の大不況となってしまう恐れがある。
実際、4月1日に発表された3月の日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)では、コロナウイルスの感染拡大を受けてさまざまな業種で景況感が悪化したが、なかでも宿泊や飲食の景気判断が過去最低となった。この調査の段階でも、日本企業の景況感はドイツ以上に悪化していたのかもしれない。疫学的な観点が最優先されるべきだが、可能な所からは経済活動の迅速な正常化が行われることが望まれるところだ。
土田 陽介(つちだ・ようすけ/エコノミスト)
1981年生まれ。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員。一橋大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を歴任後、現職。今は欧州経済の分析を担当。
関連記事
- トイレットペーパー買い占めに走る人を“情弱”と笑えない真の理由
新型コロナで広がるトイレットペーパー買い占め。買ってしまう人を笑う風潮に筆者が苦言。「頭がいい」と思ってる人ほど落ち込むワナがそこにある。 - 新型コロナでも日本企業が社員に「テレワークさせなかった」真の理由
正社員のテレワーク実施率が13%止まりと判明。新型コロナでも改まらない日本企業の制度不備。専門家がその真因を分析する。 - トイレットペーパー買い占め元凶はデマだけか メディア報道に潜む「大罪」――データで迫る
新型コロナの余波でトイレットペーパー買い占めが。デマだけでない本当の元凶とは? メディア記事データや専門家の分析から迫る。 - 「新型コロナ受けて急にテレワーク」が必ず失敗する理由――第一人者に聞く
新型コロナ対策で急に進むテレワーク。もともと機能していなかった職場では問題発生の危険も。起り得るトラブル、企業と働き手の向き合い方を第一人者に聞く。 - 新型肺炎でマスク買い占めを「あおる」のは誰? 心理メカニズムに迫る
連日報じられる新型コロナウイルス問題。特に「マスクの品薄、買い占め」が話題に。消費者を買い占めに走らせる心理メカニズムを分析した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.