NetflixがCLAMPらトップクリエイターと組む真の狙い――「製作委員会を超越する」アニメ作りの革命:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(1/4 ページ)
2月、Netflixが日本のトップクリエイター6組と提携発表。CLAMPや乙一らが名を連ねた。既存のアニメ製作の枠を超えた「大戦略」に迫る。
2020年2月25日、Netflixはアニメ分野における日本のトップクリエイター6組とのパートナーシップ締結を発表した。クリエイターと企画段階から手を組み、オリジナルのアニメ製作を目指す。Netflixと日本アニメの関わりを巡っては、オリジナルアニメの投入、アニメスタジオとの包括的業務提携に続く、大きなターニングポイントになる。
CLAMP、太田垣康男、冲方丁ら“超一流”作家陣が参画
パートナーシップを組むのはいずれも日本を代表するクリエイター達。創作集団CLAMPは『カードキャプターさくら』『魔法騎士レイアース』のほか、『X』『XXXHOLiC』といった作品で、世界中でコアなマンガ・アニメファンからも支持が高い。『神の雫』や『金田一少年の事件簿シリーズ』のマンガ原作の樹林伸、マンガ家・太田垣康男(『機動戦士ガンダム サンダーボルト』)、ヤマザキマリ(『テルマエ・ロマエ』)、さらに小説家の乙一、冲方丁が並ぶ。いずれも日本を代表するヒットメーカーで、既にアニメ化、映画・ドラマ化された作品は多い。
2015年の日本上陸以来、Netflixは日本の映像業界に大きなインパクトを与えてきた。定額課金(サブスクリプション)ビジネスモデルの本格的投入や、制作予算の高いオリジナル番組、アニメスタジオとの包括的業務提携などだ。
今回の発表もサプライズとインパクトの大きさでは、今までの取り組みに引けを取らない。とりわけ日本のアニメ業界への影響は大きい。Netflixによれば今回の発表に関わる作品は、全て同社の1社出資になる。制作費の全額をNetflixが負担することになる。
これまで日本アニメの多くは、製作委員会と呼ばれる方式で業界企業の共同出資によって製作されることが大半だった。製作委員会の参加企業は、DVD/Blu-rayを販売するビデオメーカーや映画会社、テレビ局、ときにはアニメスタジオ自身だった。アニメ企画の多くもこうした企業の中から生まれてきた。Netflixの1社出資は、これに一石を投じることになる。
Netflixは日本進出の当初から「日本アニメ重視」を掲げていた。しかしスタート当初のアニメ番組は、既にテレビ放送されたものばかりであった。それらは従来の日本の製作システムの中で作られた作品だ。
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