NetflixがCLAMPらトップクリエイターと組む真の狙い――「製作委員会を超越する」アニメ作りの革命:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(2/4 ページ)
2月、Netflixが日本のトップクリエイター6組と提携発表。CLAMPや乙一らが名を連ねた。既存のアニメ製作の枠を超えた「大戦略」に迫る。
製作委員会飛び越えスタジオと直にタッグ
転機となったのは、2018年1月配信の『DEVILMAN crybaby』だ。国内外で注目されるアニメ監督の湯浅政明を起用し、永井豪の傑作マンガを新たにアニメ化した。ここで初めてNetflix独占配信タイトル、かつテレビ放送を全くしていない作品が登場した。「Netflixオリジナルアニメ」ブランドの誕生である。ただこの段階でも、オリジナルアニメの多くは既に存在する企画を独占配信のかたちでピックアップしたものだった。
18年、19年に相次いだ日本の有力アニメ制作会社5社との包括的業務提携契約が次の転機になる。『攻殻機動隊』シリーズのプロダクション I.Gや、『鋼の錬金術師』のボンズ、さらに新興のデイヴィッドプロダクション、アニマ、サブリメイションといったスタジオと長期間にわたり安定的な番組制作を目指すことになる。
こうしてNetflixは製作委員会や放送局を飛び越えて、制作スタジオと直接ビジネスすることになる。Netflixのアニメ制作への関与は格段に大きくなった。
さらに今回のクリエイターとのパートナーシップである。制作会社さえ飛び越えて、作品のアイデアの源泉であるマンガ家や小説家と手を組む。日本アニメのアイデアの多くが、マンガや小説にあることを見抜いたものである。
これまでNetflixは番組の配信権購入は手掛けても、製作出資はしないとされてきた。その点、アニメの企画・クリエイティブには踏み込まないとの意思を制作者に感じさせてきた。
しかし「出資」となれば、Netflixは企画や制作、クリエイティブも含めて日本アニメを共に作ることになり、その役割は根本的に変わることになるのだ。映画会社の東宝が製作と配給を、ビデオメーカーのバンダイナムコアーツが製作とDVD・Blu−rayの販売を両方とも手掛けるイメージに近い。
となれば、Netflixの企画・製作で果たす役割はさらに大きくなる。いわば配信という流通会社から、自らがコンテンツを創出するクリイティブカンパニーに立場を変えるのだ。企画本数の多さからも、日本のアニメのクリエイティブの中核の1つとなるだろう。日本のアニメ企業各社のNetflixを見る目も大きく変わる。
関連記事
- 東京都知事の外出自粛要請は本当に効いたか――ビッグデータから意外な結果判明
3月最後の土日に出された都知事の外出自粛要請。実際にどの程度効果はあったか。消費者行動のビッグデータで分析した。 - 新型コロナでも日本企業が社員に「テレワークさせなかった」真の理由
正社員のテレワーク実施率が13%止まりと判明。新型コロナでも改まらない日本企業の制度不備。専門家がその真因を分析する。 - 王者Netflixを倒すのは誰か?――動画配信各社の“戦国時代”、勝敗を徹底分析
戦国時代を迎えている動画配信サービス。首位のNetflixは果たして勝ち残れるか? 映像ビジネス報道の第一人者が各サービスを徹底分析。 - 『ポプテピピック』の竹書房、米IT大手に著作権訴訟を挑む訳――日本漫画、世界の海賊版へ反撃の狼煙
『ポプテピピック』の竹書房が米ITに著作権訴訟を提起。背景には海賊版サイトに苦しむ日本漫画界の反撃が。遅ればせながら取ったその“反攻”の意義と展望を読み解く。 - 新型コロナ対策で露呈 「社員から確実に見放される企業」とは?
各社で大きく分かれる新型コロナ対策。対処ができなければ「従業員に見放される」可能性も。危機にこそ組織の本質が問われる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.