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Netflixが日本アニメの“盟主”を狙う真意――製作現場の脅威、それとも救世主?ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(2/4 ページ)

2月、Netflixが日本のトップクリエイター6組と提携発表。日本発のオリジナルアニメ製作に大胆に舵を切る。Netflixの責任者に真意と戦略について直撃した。

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スタジオには潤沢な予算、代わりに「高品質な作品」を

――これまでNetflixは「アニメの配信権は購入するけれど、出資はしない」と思われてきました。ただ、Netflixがそこまで企画にも関与するということは、むしろ製作費を担う中心となるイメージでしょうか。

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2月のNetflixの記者会見で今後の大胆なアニメ製作戦略について語る櫻井氏(筆者撮影)

櫻井: 今回のパートナーシップでの作品は全てNetflixが全額出資します。

――そうなるとNetflixは配信会社であると同時に、“クリエイティブ”を創りだす会社となり、これまでの印象とだいぶ変わります。

櫻井: 確かにスタジオ的にはなりつつありますよね。クリエイターの方にとってのホームでありたいと思っています。なるべくやりたいことが実現できるように、と考えています。

――Netflixが100%権利を持つと、企画づくりにおけるアニメスタジオの役割が小さくなるように見えます。

櫻井: それは全然無いですね。お付き合いのあるスタジオさんも、そうは思っていないはずです。打ち合わせにはスタジオの方や監督も必ず入っていますし、出来上がった企画をただ発注するだけの関係ではないと思っています。

 あと大きなところでは、十分な資金を提供し、制作費で赤字が出ないように、また利益もでるようにしています。一方で、詳しい内容はお伝えできませんが、会社さんごとに都度協議もしています。例えば、権利窓口に関しては、自社で運用できるスタジオとできないスタジオで違いがありますから、会社さんごとに相談しています。逆にどういった条件であれば組んでいただけますかという話をして、組めるかどうかを検討しています。

――2018年、19年に結んだスタジオとの包括的業務提携は、具体的な成果はでていますか。

櫻井: スタジオ側には、メリットが大きかったと思ってもらえているのでないでしょうか。メリットの1つは、何年間かにわたり、ある一定数のプロジェクトがあると事前に分かることで、経営が安定することです。向こう何年間にわたり制作の安定供給があることで、人をどれだけ採用できるかや、どれだけ設備投資ができるかなど、経営戦略を考えることができます。また、作品づくりでは、クリエイターとNetflix、スタジオと関係者がとても少ないです。そうした中での意思決定は、スタジオサイドにとってはやりやすいと思っています。

――Netflixのオリジナルアニメは予算がこれまでより高めとされていますが、スタジオに対する影響はあるのでしょうか?

櫻井: これまで予算が無くてできなかった映像が実現できるようになったと思います。一方で、潤沢な予算を提供する代わりに作品に高いクオリティーを求めた時に、クオリティーを上げられないスタジオはもしかしたら厳しいかもしれないですね。ですから僕らと組むことにメリットを感じるスタジオと、感じないスタジオも出てくると思います。

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