電車を止めよう――勇気を持って主張したい、3つの理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
緊急事態の今、感染拡大を食い止め、医療と社会を立て直すために必要なのは、電車を止めることだ。そこまでするべき理由は「感染」「名誉」「経営危機」の3つ。大変なことではあるが、「通勤を止める」「生活費を支給する」方法がないわけではない。
電車を止めよう。感染拡大を食い止め、医療を立て直すために、いま鉄道業界にできることは、旅客列車の完全な運行停止だ。それは大変なことだ。しかし勇気を持って決断してほしい。
1カ月前の私は新型コロナウイルス感染拡大に対する認識が甘かった。これは認めざるを得ない。3月20日付の当連載「コロナ問題で気になる『鉄道の換気』の秘密 今こそ観光列車に乗りたいワケ」をいま読み返すと赤面モノだ。
「通勤電車の窓開けと時差通勤は集団感染の対策であり、列車そのものは3密にならない」と書いた。「観光列車は3密ではないから運休の必要はない」とも書いた。末尾に至っては「それでも私は旅に出る」とポエムまで書いた。が、認識が甘かった。
4月6日に「政府が緊急事態宣言の準備」と報じられた。翌7日には安倍総理が会見を開き「緊急事態宣言を表明」、8日午前0時に発動した。鉄道など公共交通については「必要な社会サービスとして維持」とされ、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」する。これを受けて、イベント、会合などの自粛に加えて、テレワークの推進など民間の動きが始まった。休業補償の実施やそれに関する情報も少しずつ現れている。
実は、4月7日から9日まで旅に出るつもりだった。しかし、政府が緊急事態宣言準備と報じられた4月6日、全ての列車と宿をキャンセルした。偉そうなことを書いた手前、ここで行かなくてどうする、という気持ちは最後まであったけれども、緊急事態宣言が出るとなると考えが変わった。
だから今回は前回と真逆の内容を書く。転向である。前回の記事は恥ずかしくて取り下げたいくらいだけど、戒めのためにあえて残したい。公開から時間がたち、トップページからはリンクされなくなっており、そのおかげで炎上から逃れたようだ。もっとも、当時は読者の皆さんも私と同じくらいの気分だったかもしれない。開き直ればそれを示す資料でもある。
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