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ヤリスの何がどう良いのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。

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シャシーの力

 では、「要するにヤリスは燃費がすごい」ということでいいのかというとそうではない。運転フィールそのものが、先代であるヴィッツとは比較にならないくらい進化しているし、何より「もっといいクルマ」の目指す先が明らかに変わってきている。


こちらはハイブリッド。房総半島の海沿いに走ると、時に街道のさらに海側に現地の人々の使う細い生活道路がある。そんな場所でもスイスイと入っていかれるサイズは非常に魅力的

 具体的にはリファレンスが違う。ヴィッツはとにかく鈍感に仕立てられていた。それは鈍感であることが安全につながる、という思想を背景にしていたように思う。しかしヤリスはそこが違う。ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せること。その上で、リスキーな場面で挙動がトリッキーにならない仕立てになっている。今回は公道試乗なのでギャンギャンシゴくような走り方は一度もしていないけれども、過去にプロトタイプをクローズドコースで2回テストしているので、その領域の挙動は十全にチェックしてある。

 例えば、150キロオーバーからの、急制動を掛けながらハンドルを切り込んでいくような場面でも、リヤタイヤがグリップを放棄しそうな気配はない。ペダルの踏み込み速度が速いと、アシストが効いて、ドライバーが意図していないフル制動モードに入ったりするのだが、わずかに振られるものの、それでも挙動そのものが不安定になったりはしない。

 弱い上り勾配のコーナーを全開で加速しながら登って、頂上で曲がり率がキツくなるような嫌な場面でも、フロントタイヤのグリップを信用して、舵(かじ)を最後まで効かせることができる。少しアクセルを離してやるなり、軽くブレーキを舐(な)めてやるなりすれば、より確実に意図したラインに乗せることができる。

 という次第で、シャシーは極めて高い能力を持っているのだが、その身のこなしはキレキレ系ではない。そこが、トヨタの目指す新たな「もっといいクルマ」の一番特徴的な部分である。


メーターを含めインテリアは、素晴らしいとまではいえないが、それでも「この内装を毎日眺めるのか」と暗澹(あんたん)とするようなことはない。個性的でありつつ、嫌味のない造形だと思う

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