「保険料を払うことで誰かを助けられる」 わりかん保険の透明性が導く本質(2/2 ページ)
保険の原点である「助け合い」をテクノロジーの力で蘇らせたわりかん保険。自分の払っている保険料が、がんで困っている誰かに渡されて役に立っている。それを実感できるように、もし誰かががんになったら、性別、年齢、どんながんだったのかが、加入者に連絡する仕組みを用意している。
現在、保険料はゼロ円 圧倒的なコストパフォーマンスだが
もう一つ、加入者が口々に話した特徴は、保険料の安さだ。誰かががんにかかった時点で保険金を割り勘するため、逆にいうと、誰もがんにかからなければ、保険料はゼロだ。現在、justInCaseは加入数を公表していないが、サービス開始から、2月、3月、4月と、一度も保険料は発生していない。
加入者の30代女性は「本当にゼロ円なんだ、というのはメリット」だと話す。加入も簡単だ。販路の一つとしてLINE Financialと提携しており、スマホからならLINEにログインすることで、入力する契約者情報を補完させることもできる。
もし、誰かががんになった場合も、支払う保険料には上限が設けられている。39歳までは500円、54歳までは990円、74歳までは3190円だ。たまたま一度に多くの人ががんになっても、支払い額が急に膨らむこともない。
しかし、保険料がゼロであっても、システムとしての保険の運営にはコストがかかる。保険会社であるjustInCaseの取り分は、支払う保険金に上乗せした35%だ(加入者増加に従って引き下げる)。これは、誰かががんになって保険金支払が発生しなければ、保険会社に収入がないことを意味する。
「(わりかん保険は)まだ始まったばかりで、保険料そのものもゼロのまま。人が集まらないと付加保険料分が足りないのではないか? ちゃんとした保障として、老後まで見通したときに安定感がどうなのか」
もともと保険業界にいたという60代の男性加入者は、こう不安を話した。保険は、統計と大数の法則に基づいて、一定の数まで加入者が集まれば、想定どおりの保険料と保険金の支払いが見込まれる。既存の保険の“不透明さ”をなくし、助け合いという本質に迫るわりかん保険。安定して事業が存続できるかを決めるポイントは、加入者数になるだろう。
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