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ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。

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Aピラーが倒れているのはなぜか?

 さてここからパッケージ論が始まる。先週の記事についたコメントで、「なんでこんなにAピラーが倒れているのか?」という疑問があったので、それを軸に解説してみよう。

 まず、AセグとBセグは、先進国用と途上国用では商品企画が全く違う。先進国では、コンパクトカーはコンパクトだから価値がある。つまりデカいクルマに乗りたくない人や、デカいクルマは他に持っている人が、日常のアシか、運転の苦手な家族用にコンパクトカーを買う。だから先進国用のコンパクトカーは、リヤシートが広々していることにあまり重きを置かない。むしろデザインやクオリティが高いことを優先する。

 一方で途上国では、ホントはもっと大きくて立派なクルマが欲しいのだが、経済的な制約で大きなクルマは買えない。だから安価なクルマとしてコンパクトカーを買う。だから安ければ小さくなくても構わないというより、むしろ大きくて立派で安い方がいい。

 という前提で見ると、なかなか面白い。スズキとダイハツのクルマはあまりAピラーが倒れていない。ハスラーやスイフト、ミラ・トコットやロッキーは昨今のクルマの中ではAピラーがしっかり立っている。つまり、広さを重視しているということだ。スズキはいうまでもなく、インドがメインマーケットだし、ダイハツはトヨタアライアンスの中で新興国マーケットを担う役割を与えられている。

 Bセグメントにおいて、ピラーが寝ている代表はヤリスとMazda2が挙げられる。これらのクルマは、先進国での需要を狙っている。だからクーペライクなスタイリッシュさを求めているのだろうと想像される。

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