コロナ禍で時短、休業、閉店に陥ったコンビニの絶叫 「“社会インフラ”なのに支援無い」:コンビニオーナー“大反乱”の真相(3/3 ページ)
新型コロナの影響がコンビニ加盟店を直撃。売り上げ激減に加え従業員の感染不安で営業難しく。オーナーは国や本部の支援の薄さを嘆く。
休業・閉店に追い込まれた加盟店の悲鳴
東京都板橋区のファミリーマートA店は新型コロナの余波で4月18日から休業に入り、程なく閉店する予定だ。オーナーのBさんにとって苦渋の選択だった。
Bさんも父からampmを引き継いだ(その後、ファミリーマートと合併)。コンビニはこれまでも地域の人たちの役に立ってきた。新型コロナの下でも、できることをしよう。そう考えていた矢先、アルバイトの女性からシフトのことで相談を受けた。再婚した夫に重い病気が見つかった。もし私が新型コロナに感染したら、彼との最後の時間を一緒に過ごせなくなりそうで怖い、と。
確かに店頭には感染リスクがある。それなのに従業員用のマスクも手袋も、スーパーバイザー(店舗指導担当の本部社員)は「個店対応してください」と言うばかり。感染防止のため、店にも来なくなった(ファミリーマートはその後、いくつかの加盟店支援策を打ち出した)。
「正直、不信感が生まれました。社会インフラと言いながら、本部からも国からも支援はない。それなら緊急事態宣言中は、コンビニも閉めたって文句は言えないのでは」
最初は難色を示した本部も、Bさんが引かないと見ると「(緊急事態)宣言中は閉めていただいてけっこうです」と承認した。
知り合いの社会保険労務士から従業員に給与の6割の休業補償を払う必要があることと、国から雇用調整助成金をもらえることを聞き申請した。「書類が多くて、計算や記入が面倒でした。3日がかりでした」と遠藤さん。東京都の休業協力金が対象外であるため、国の持続化給付金も申し込むつもりだ。
5月4日、安倍首相が緊急事態宣言を延長したことを受け、遠藤さんも休業の延長を決めた。従業員への休業補償も10割に引き上げ、雇用調整助成金の申請にも手直しを加えた。ドミナント(近隣出店)による売上減もあって、近く契約を終える。
「コロナ禍と景気の落ち込みでコンビニも淘汰が進むでしょうね。それでも必要な業態なんで、もう少し支えがあるといいのですが」
新型コロナ感染症の広がりと深刻な景気後退はコンビニ業界をも揺るがし、オーナーにも本部にもさまざまな「選択」を迫っている。ただ一つ言えるのは、24時間年中無休の見直しとコンビニ業態での「働き方改革」推進は、もう止まらないということだ。
立地によっては夜閉める。必要なら休業も考える。お客も、それに合わせて行動変容する。緊急事態下でのそれぞれの対応は、コロナ後の社会で「新しい当たり前」になるのではないだろうか。
著者プロフィール
北健一(きた けんいち)
ジャーナリスト。1965年広島県生まれ。経済、労働、社会問題などを取材し、JAL「骨折フライト」、郵便局の「お立ち台」など、企業と働き手との接点で起きる事件を週刊誌、専門紙などでレポート。著書に『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないか』(旬報社)、『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社)ほか、共著に『委託・請負で働く人のトラブル対処法』(東洋経済新報社)ほか。第68回東京労働大学専門講座(労働法コース)で東京都知事賞を受賞。
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