異例のロングランヒット、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の舞台裏に迫る:中国アニメ『羅小黒戦記』ヒットの舞台裏(4/4 ページ)
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』というタイトルのアニメ映画が、東京都内のミニシアターで、2019年9月から劇場を替えつつロングランとなっていた。首都圏だけでなく、大阪、名古屋、札幌など日本各地のミニシアターでも順次上映されており、日本での総観客数はすでに3万人を超えている。ディズニー以外の海外製アニメ、なかでも中国製のアニメ映画が、日本の映画館でこのようなロングランヒットになった例は、これまでにあまり聞いたことがない。日本配給を手掛けた白金氏にヒットの舞台裏を聞いた。
日本のアニメと似ているようで「ちょっと違う」
――なるほど、日本のファンによる口コミが広がっていることに気が付いた段階で、草の根から盛り上げていく宣伝スタイルに、いち早く切り替えたわけですか。
私はこれまで実写映画や商業映画の仕事をやってきて、アニメを手掛けたのは今回が初めてだったので、日本のオタクビジネスの良い勉強になりました。
今回の日本でのヒットは、中国の映画業界人もビックリしています。中国の映画興行の場合は、最初の段階で人気がないと、すぐに公開を打ち切ってしまうんです。ところが今回は、ジワジワと人気が広がっていく形になりました。ファンが愛着を持って作品を成長させるという形は、将来的に中国のエンタメ業界にも広がるかもしれません。
それから、『羅小黒戦記』をインディペンデント系のミニシアターが上映してくれたのも、いい勉強になりました。そうしたミニシアターは劇場内のディスプレイを工夫するなど、自分たちならではの環境を作り上げています。そういった映画館にも感謝の気持ちを持って、これからもいろんな作品を提供できればと思っています。
――『羅小黒戦記』が日本でロングランヒットになった理由を、白金さんとしてはどのように考えていますか?
それはオリジナル性だと思います。日本の観客は、アニメだけでなく実写映画もそうですが、日本の作品をリメイクしたような作品を嫌います。日本のテレビドラマを韓国でリメイクして、それを日本に逆輸入しても、ほとんどヒットしないですよね。だって、そもそも元になった作品があるんですから。
それに対して『羅小黒戦記』の監督やスタッフは、日本のアニメのファンではあるけれど、自分たちのストーリーを作り上げています。日本のアニメと似ているようで、でもちょっと違う。そこはヒットのポイントになったかもしれないと思っています。
あとは、この作品が2D(手描き)のアニメだったことですね。ディズニーをはじめ、世界が3DCGのアニメを作っているときに、日本だけが昔ながらの2Dのアニメを作っています。だから『羅小黒戦記』が2Dのアニメだったのは、日本のアニメファンにとってうれしいポイントだったんじゃないかなと思います。
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