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コロナ後、テレワークは結局「無かったこと」になるのか――第一人者に直撃働き方は果たして「後退」するのか(2/3 ページ)

コロナ対策で急速に進んだテレワーク。今後「無かったこと」になるのか、それとも「新しい働き方」になるか。テレワーク研究の第一人者に直撃。

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「生産性向上」を安易に目的にしない

――やはり、テレワークが非常時対応に適している点だけでなく、生産性向上といった利点も早々と打ち出す必要がある、ということでしょうか?

比嘉: いや、個人的にはテレワークにおいて「生産性向上を(当面の)目的にはすべきでない」と考える。テレワークで生産性が上がらないわけではない。ただ、その上がり方がすぐにはなかなか測れないからだ。

 既に数年間テレワークを実施していて従業員も慣れている環境なら、生産性は恐らく上昇しているだろう。ただ、導入当初の半年〜1年は、従業員が新しい働き方や管理・評価体制に慣れるため、「まずは生産性が落ちなければトントンでいい」という準備期間として捉えるべきだと思う。

 むしろ短期的に出る成果として経営者が取り組みやすいのは、オフィスの賃料を始めとした大幅なコスト削減だ。こちらは確実ですぐ出る効果であり、定量的にも評価しやすい。(オフィス廃止で)通勤費やコピー機などのリース料、紙の費用なども無くなる。東京23区内のオフィスの1人当たりコストは約7万円というデータもある。特に中小企業にとっては大きな削減効果になるだろう。

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コロナ禍によるテレワーク化が好調なため、ClipLine(東京・港)は写真の本社オフィスを解約した(同社提供)

 他に1〜2年で効果が出やすいのが、企業の「人手不足解消」対策だ。特に都内の企業でテレワークをしている企業では、そうでないところに比べて集まる人材の量、質ともに違ってくる。過去には採用で「在宅勤務可」を全面的に宣伝したところ、応募者が数十倍にも増えた企業の事例がある。人材獲得の面でも、テレワークを巡った企業の「二極化」が進むだろう。

 コロナ騒動前から問題になっていた介護・育児離職問題もテレワークで防ぐことができる。そうして(年齢・性別など)人材が多様化すれば、企業のイノベーション力向上にもつながる。こうした効能もあるため、生産性向上の効果について測定するのは実施2年目くらいからでいいと私は考える。まずは、生産性以外の導入目的を据えるべきだろう。

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