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宇宙開発は製造業からインフラ・情報産業へ――インターステラテクノロジズとアクセルスペースが描く宇宙ビジネスの展望宇宙は“特別な場所”ではない(1/2 ページ)

北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(IST)と、超小型人工衛星事業に取り組むアクセルスペースのトークセッションが、4月20日にオンラインで開催された。ISTのこれまでの道のりと、今後の宇宙開発の展望などを書き下ろしたISTファウンダーの堀江貴文氏の著書『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SB新書)の出版を記念したものだ。セッションの模様をお届けする。

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 北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(以下、IST)と、超小型人工衛星事業に取り組むアクセルスペースのトークセッションが、4月20日にオンラインで開催された。ISTのこれまでの道のりと、今後の宇宙開発の展望などを書き下ろしたISTファウンダーの堀江貴文氏の著書『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SB新書)の出版を記念したものだ。

 登壇したのは、ISTの稲川貴大代表取締役社長とファウンダーの堀江貴文氏、それにアクセルスペースの中村友哉代表取締役CEO。ISTが開発を進めている超小型の人工衛星打ち上げロケット「ZERO」が、アクセルスペースの超小型衛星を頻繁に宇宙に運び、新たなインフラを生み出すといった数年後の宇宙ビジネスの姿を語り合った。トークセッションの模様をお伝えする。

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稲川貴大(いながわ・たかひろ)インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長。1987年生まれ。東京工業大学大学院機械物理工学専攻修了。学生時代には人力飛行機やハイブリッドロケットの設計・製造を行なう。修士卒業後、インターステラテクノロジズへ入社、2014年より現職。経営と同時に技術者としてロケット開発のシステム設計、軌道計算、制御系設計なども行なう。「誰もが宇宙に手が届く未来を」実現するために小型ロケットの開発を実行。日本においては民間企業開発として初めての宇宙へ到達する観測ロケットMOMOの打上げを行った。また、同時に超小型衛星用ロケットZEROの開発を行なっている。
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堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年福岡県生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。インターステラテクノロジズ株式会社ファウンダー。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。東京大学在学中の1996年、23歳でインターネット関連会社の有限会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から05年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙立候補など既得権益と戦う姿勢で注目を浴び、「ホリエモン」の愛称で一躍時代の寵児となる。2006年、証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決。2011年に収監され、長野刑務所にて服役するも、メールマガジンなどで獄中から情報発信も続け、2013年に釈放。その後、スマホアプリのプロデュースや、2019年5月に民間では日本初の宇宙空間到達に成功したインターステラテクノロジズ社の宇宙ロケット開発など、多数の事業や投資、多分野で活躍中。 新著に『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SB新書)。
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中村友哉(なかむら・ゆうや)アクセルスペース代表取締役最高経営責任者(CEO)。1979年、三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中、3機の超小型衛星の開発に携わった。卒業後、同専攻での特任研究員を経て2008年にアクセルスペースを設立、代表取締役に就任。会社設立後、株式会社ウェザーニューズやJAXA(宇宙航空研究開発機構)等から衛星開発を受託、合計5機の超小型衛星開発・打ち上げ・運用に成功。また、2015年の大型資金調達後には自社衛星群による次世代地球観測網AxelGlobeの構築を進める。2015年より宇宙政策委員会宇宙産業・科学技術基盤部会委員。

民間による宇宙事業は本格的なビジネスへ

 オンラインで開催されたトークセッションは、ISTの稲川氏と堀江氏、それにアクセルスペースの中村氏の3人がそれぞれ別の場所から参加した。

 宇宙ベンチャーのISTは、2019年5月に観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機」の打ち上げに成功。日本の民間企業として初めて、世界でも9社目となる宇宙到達を果たした。一方のアクセルスペースは超小型衛星開発に取り組む大学発のベンチャーで、中村氏が08年に設立している。

 堀江氏は、18年6月に打ち上げ直後に落下・炎上した「MOMO2号機」の写真をバーチャル背景にして登場。第二次世界大戦中から始まったロケット開発の歴史と、長い間国家主導で宇宙開発が進められてきた経緯に触れ、以前は開発に多額の費用がかかっていたものの、現在では民生品をある程度使うことで大幅なコストダウンが可能になったと説明した。

 中村氏は、大学でのものづくりから出発した超小型衛星の開発が、技術も向上し、社会に役立つツールとして認められつつあると手応えを述べた。そのうえで、「われわれが築き上げてきた技術がいままさに花開こうとしている」と、民間による宇宙事業が日本でも本格的なビジネスになろうとしていることを強調した。

アクセルスペースが進める小型衛星事業の未来

 ISTでは観測ロケット「MOMO」の開発と並行して、超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発も、23年ころの打上げを目指して進めている。稲川氏は、安価な小型衛星を複数打ち上げて互いの衛星をネットワーク化する「衛星コンステレーション構想」を進める企業が、世界中でどんどん出てきているとして、そのプレイヤーの1社であるアクセルスペースがどのような構想を持っているのかを中村氏に聞いた。

 中村氏は、08年の起業以来、特定の顧客向けに専用衛星を開発してきた一方で、初の自社向け超小型衛星を18年末に打ち上げて運用をしていることを明かした。22年までにまず10機体制にして、ゆくゆくは数十機の人工衛星を軌道上に打ち上げ、高頻度に世界を観測していく新しいプラットフォーム作りに取り組む考えを示し、次のように語った。

 「簡単に言えば衛星画像や、そこから得られる情報を顧客に提供する事業です。地球全体を俯瞰して、高頻度に観測することで、いま地上で何が起きているのかを知り、過去のトレンドから未来を予測できるようになります。インターネットによって起きたような社会の変革が、衛星コンステレーションによる地球観測でも起きるのではないでしょうか。新しいビッグデータの1つとして、事業を育て上げていきたいと思っています」

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オンライン記者会見の様子
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