印鑑業務を止めるだけで日本人が休暇を1週間増やせる深い訳:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
東北大が押印廃止で事務をオンライン化。こうした生産性向上で筆者は「1週間分の休み」が増えると試算。欧米で取れる長期休暇が日本で取れない真因をそこに見る。
コロナ禍、日本の「非生産性」と向き合う契機に
状況を改善するためには、自身のどこが悪いのか理解することが重要であり、うまくいっている相手(人や国)と比較するのはもっとも効率のよいやり方である。諸外国との比較を忌避している人は、長時間労働が無くならず、安月給が続いてもよいのだろうか。比較を嫌がる人ほど、自身の年収や労働環境に不満を抱いているのではないだろうか。
今回のコロナ危機は人類にとって大きな試練だが、改善すべき課題が山積している日本にとっては、状況を打開する原動力になり得る。コロナ危機をきっかけに、徹底的に業務のムダを見直し、より付加価値の高い業務にシフトすることができれば、日本の生産性を一気に欧米水準に近づけることも夢ではない。
12%の生産性向上に成功すれば、今の状態から50万円の年収アップ、もしくは1カ月の休暇をほぼ全労働者が享受できる。真剣に取り組んでみる価値は十分にあると筆者は思うのだが、皆さんはいかがだろうか。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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