元グラビアアイドルが語る、SNSの有名税と誹謗中傷 テラスハウス問題の本質とは:専門家のイロメガネ(4/6 ページ)
13年間グラビアアイドルとして活動してきた間、活躍するために、そして生き残るために、ネットをいかに活用するかは最も重要だった。「嫌ならSNSを辞めればいい」というものがある。真正面から答えるなら「簡単に言わないで欲しい」の一言だ。芸能活動でSNSは命といっても過言ではないからだ。
ネット活動は芸能活動そのもの
SNSが命のように大切な理由の2つ目として、SNSは芸能活動そのものでもあるからだ。少なくとも私はそうだった。
2006年のデビューと同時にブログを始めた。SNSで自分を発信することが芸能活動のスタートだった。当時の所属事務所は設立したばかりでタレントが私一人だったという事情もあるが、まずは地道にSNSを頑張り、ファンを増やしていこうという戦略だった。実際、毎日ブログ更新を頑張ると少しずつ見てくれる人が増えた。
よっぽど恵まれた環境にある人は別にして、多くの芸能人はSNSでいかにフォロワーを増やすか、ブログのアクセスを増やすか、毎日必死になっている。
自分でコントロールできるSNS、ブログ、ライブ配信などでオリジナリティーを出し、自身の価値を作っている。私は広島弁を使い、地元の友達と話すようなSNS発信を心がけた。初めての雑誌掲載、テレビ出演が決まった時はブログで報告し、応援してくれるファンと喜びを共有した。オーディションに落ちたことや、ホームシックで辛い事など悩みも打ち明けた。
13年の間、芸能活動を続けてこられたのは、間違いなくネットやSNSでファンとの交流があったからだ。芸能活動の全てといったら大げさに聞こえるかもしれないが、決してキレイごとではなく、そのくらい大切なものを、誹謗中傷を受けたからと辞める選択肢は私にはなかった。これは芸能活動をする人にとって共通する認識ではないかと思う。
そして、誹謗中傷にあったらSNSを辞めればいいという人は、本当にそれでいいのかよく考えてほしい。芸能人に限らず、SNSを利用するすべての人が誹謗中傷に合う可能性があるのだ。
最近ではコロナに感染した方がSNSでつるしあげられたり、過去にはバイトテロなど普通の学生が非難の的となっている。自分の発言が多くの反感を買ってしまう可能性は誰にでもある。誰もが誹謗中傷される立場になり得る。被害を受けた側が辞めるだけで問題は解決しない。
有名税という勘違い
「有名人なんだからたたかれるのは覚悟するべき」。この言葉もSNSの誹謗中傷の話題で必ず出てくる。有名税といわれるものだ。
私自身、タレント時代は誹謗中傷でも無関心よりマシ。好きの反対は無関心。私のこと知ってくれてうれしいな! わざわざ中傷リプありがとう! そう思うことで昇華させていた。芸能界自体が、たたかれてナンボ、話題になったことを喜べ、そんな世界だ。炎上商法という言葉もあるように、それが当たり前だと考えていた。
……はっきり言って異常だ。
芸能界をやめてからその異常さに気付いた。たたかれてナンボという思考は軽い洗脳だったのではないかと今では思う。番組制作も人の感情を揺さぶるギリギリを攻めている。感動より不満や批判の方がSNSで拡散されやすいことから、意図的に炎上に近いものを狙っている。それを利用して視聴率を稼いでいる。
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