オンラインカジノに移行へ コロナ禍で存続の危機に立たされる世界のギャンブルビジネス:コロナ禍のカジノ事情「海外編」(3/3 ページ)
IRの中で多くの人が集まってゲームをするカジノは、新型コロナウイルスに感染しやすいといわれる密集集団を作りやすい。それだけに再開するにあたっては感染防止策がキーポイントになる。
「崩れた高収益構造」オンラインカジノへ
海外のカジノ事情に詳しい鳥畑与一静岡大学教授は以下のように分析する。
「日本に進出を目指してきたIRの運営を行うカジノ業者の多くがコロナ禍で業績が悪化していて、特に第2四半期はさらに赤字が膨らむと予想される。大阪に進出を予定しているMGMリゾーツは、いくつかの米国にあるカジノ施設を売却して80億ドルの資金を調達してこれを日本への投資に向けようとしたものの、コロナ対策で手元資金と投資資金を使い果たしてしまい、また売却した施設をリースバックして使うため借金が増加するなどして、その目算が狂ってきている。
同社の格付けは『BBマイナス』で、『シングルB』の一歩手前で投機的格付けにまで下がっており、市場の評価も落ちてきている。ということからして、大阪への進出はとても無理だ。いずれはMGMも撤退を表明するのではないか。このほかの業者も日本への進出に当たり、100億ドルを投資すると言われてきたが、どの業者もラスベガス、マカオ、シンガポーツなど地元での業績が赤字に転落していて、日本に巨額の投資をする余裕がなくなっている。
カジノが再開したとしても、客がすぐには戻ってこないだろうから、V字回復は難しい。仮にフル操業になったとしても、これまでのようにカジノにスロットマシンやテーブルに客を詰め込んで、高収益をあげることは難しい。コロナ禍の経験から、これからはカジノ施設など室内から、オンラインによるギャンブルに変わって来るのではないだろうか。
米連邦最高裁判所は2018年に、プロ野球、プロバスケットボール、アメリカンフットボールなどプロスポーツを賭博の対象とすることを合法とする判断を示した。これからはオンラインのギャンブルにシフトして、観客も感染を警戒してリモートで参加するようになるのではないか。そうなると地上の巨大なカジノ施設などは不要になってしまう」
こうしてみると、世界のカジノ観光地は、どこもコロナ禍の打撃から立ち直るにはかなりの時間が掛かりそうだ。しかも密集になることが感染リスクにつながることから、これまでのような密集団で長時間にわたって遊ぶことが難しくなる。
営業的には感染防止対策のための出費は増える反面、減収になるため、過去に上げた高い利益を上げるのは厳しくなる。高収益な投資事業とされてきたカジノに代表されるギャンブル産業は、コロナ禍により存続の危機に立たされている。
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