デジタル経済に舵を切れ 「変われない日本企業」から脱却するために:中島厚志がアフターコロナを見通す【前編】(3/3 ページ)
コロナ禍の中で議論が巻き起こった「9月入学」の導入。新潟県立大学の中島厚志教授は「日本経済と企業の今後の在り方も問われるもので、見送りになったことは残念」だと語る。コロナ後の世界で企業が取り組むべきこととは――。中島教授に真意を聞いた。
テレワークは地方創生にプラス
――新型コロナの影響によってセミナーもオンラインで開催される「オンラインセミナー」の形態を取ることが増えました。
オンラインでの取り組みによってこれまで知名度がなかった企業が躍進する事例も出てくるでしょう。逆に、これまで立派な会場や熟練したスタッフを擁し、対面でのセミナーに強みを発揮してきた大手の企業には逆風が吹く可能性すらあります。同様に展示会の在り方自体も変わってきそうです。この転機をどう捉えて生かすかを考えなければなりません。
――オフィスが減っていく動きが加速すれば不動産価値への影響も考えられます。
フランスのネット不動産仲介会社SeLoger社が公表した3月末のデータでは、一戸建ての価格上昇率がアパートを上回りました。同社は、新型コロナの影響で人々が人口密度の高い街の中心部よりも郊外への居住を選択していることや、テレワーク化の影響で通勤距離を今ほどには重視しなくなっていると言及しています。このような傾向が日本でも起きれば、都心回帰が起きている日本でも郊外一戸建て住宅が相対的に見直される可能性につながります。
確かにテレワークをするのであれば、人口が密集して感染リスクが高まる都市の中心部にわざわざ住む必要はないのです。これは、地方創生と言う意味でもプラスになるでしょう。
――オフィス需要が減り、都心から地方へと人が流れていった場合、どのような変化が起こるのでしょうか?
郊外に住む人が増える一方で、都心も職住近接が普通になっていく可能性もあります。パリ一番の目抜き通りのシャンゼリゼ通りでは、建物の上階は居住スペースになっていて、実は人が住んでいるのです。東京の都心でも職住近接を実現したおしゃれなビルなどが、10〜20年という時間を掛けて建設されていくかもしれません。
重要なのは、デジタル経済化でオフィス縮小やコスト削減を実現し、企業の生産性を上げるという視点です。賃金が相対的に安い非正規をたくさん雇う経営の在り方は格差を拡大させます。米国では暴動も起こっていますね。そうではなく、社員の賃金を上げ、より少ない人で効率の良い働き方にすることが大事なのです。そのおおもととなるのは人材であり、やはり冒頭で申し上げたように教育ということになるわけです。時代が激変しているのに70年前と同じ教育制度であっていいはずがありません。
関連記事
- 人口減少時代にリニアは本当に必要なのか?
国立社会保障・人口問題研究所によると30年後の2050年には1億人を割ると予測している。厚生労働省のデータによると1億人を下回るのは1966年以来だ。そうした状況下で東京と大阪を結ぶリニア中央新幹線は必要なのだろうか? - リニアを阻む静岡県が知られたくない「田代ダム」の不都合な真実
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続ける一方で、「黙して語らない」大量の水がある。静岡県の地元マスコミも触れられない「田代ダム」の不都合な真実を追った――。 - 静岡県知事の「リニア妨害」 県内からも不満噴出の衝撃【前編】
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続けている。なぜ静岡県知事はリニア建設を「妨害」するのか? 現地取材で浮かび上がった実態を前後編でお届けする。 - 静岡県知事の「リニア妨害」 県内からも不満噴出の衝撃【後編】
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続けている。なぜ静岡県知事はリニア建設を「妨害」するのか? 現地取材で浮かび上がった実態を前後編でお届けする後編。 - リニアを止める静岡県 川勝知事「ヤクザ・ゴロツキ」暴言問題の背景に「ハコモノ行政」
「ヤクザの集団」「ゴロツキ」「反対する人がいたら、県議会議員の資格はない」――。静岡県の川勝平太知事は12月19日、JR東静岡駅前に計画している図書館などが整備される予定のいわゆるハコモノ施設「文化力の拠点」について、来年度予算を認めない県議会の自民党系の最大会派を、こう侮辱した。川勝知事のとどまるところを知らない“口撃”の背景にあるのは……。 - リニア建設を阻む静岡県――川勝知事の「禅問答」がもたらす、これだけの弊害
JR東海によって建設が進められているリニア中央新幹線の着工がストップするという事態に陥っている。静岡県の川勝平太知事がリニア建設への協力の「代償」を要求するなど、現時点での着工に新たな条件を要求しつつあるからだ。繰り返される「禅問答」によって、多くの弊害が生まれている――。 - リニアを阻む「水問題」 専門家の指摘で分かった“静岡県のもっともらしいウソ”
リニア中央新幹線静岡工区の工事が、静岡県によって止められている。両者の交渉が停滞しているのを見てきた、河川工学の専門家に取材を進めると、“静岡県のもっともらしいウソ”が浮かび上がってきた。トンネル工事で大井川の水は減らない――。 - リニアの「徐行」は新幹線の最高速度だった
わずか40分で東京の品川駅と名古屋駅を結ぶリニア中央新幹線。リニアに乗車し時速500キロを体感してきた。感想は…… - “グランクラス2.0”始動! 「新幹線版ファーストクラス」をリニューアルするJR東の「次の一手」
JR東日本は新幹線版ファーストクラス「グランクラス」の車内サービスを運行後初めて一新する。他社で車内販売が廃止される中、JR東が打った「次の一手」の狙いとは――。 - 山手線、東海道新幹線の隣にある「巨大な穴」は、リニアの「秘密基地」だった
都心のビジネス街にぽっかり開いた巨大な穴の正体は――。 - 長野県、山梨県、静岡県が「首都圏」になる日
2027年に東京(品川駅)・名古屋間の開通が予定されているリニア中央新幹線(37年には名古屋・大阪間も開通予定)。開通後は移動時間が飛躍的に短縮されるため、長野県、山梨県、静岡県も東京までの通勤圏になってくる。日本の働き方にどんな影響を与えるのかを考えてみた。 - JR東海が「駅のない」奈良で観光キャンペーンを仕掛ける理由
JR東海が「駅のない」奈良で観光キャンペーンを仕掛けるのはなぜか? 「そうだ 京都、行こう」によって、京都を、日本を代表する観光地に押し上げた再現はなるか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.