コロナで変わる、桃鉄・シムシティ的な都市開発:専門家のイロメガネ(3/5 ページ)
TVゲーム「桃太郎電鉄」や「シムシティ」は、戦後日本の都市開発を単純化したものだと言えるだろう。当時の日本では、阪急や西武といった私鉄各社が都市開発をリードしていた。コロナにより働き方や購買行動が変化することで、都市開発、不動産開発がどのように変化するのか。今後のビジネスの変化についても考えてみたい。
都市開発をけん引した私鉄各社
不動産の市場をけん引するのは不動産会社だと、多くの人は考えているだろう。しかし高度経済成長期からバブル期にかけて、都市開発リードしていたのは私鉄と呼ばれる鉄道各社だ。
筆者は東京練馬区出身で、最寄りが豊島園駅だったため、電車といえば西武池袋線、デパートといえば池袋の西武デパート、球場といえば所沢の西武球場、遊園地やプールといえば「としまえん」だった。成人式会場も練馬区民の特権でとしまえんだった。スーパーの西友は大人になるまで近所になかったが、これらはいずれも西武グループ(西武ホールディングス)によるものだ。
厳密には創業者・堤康次郎の死後、三男の義明氏が引き継いだ西武鉄道グループと、次男の清二氏が引き継いだ西武百貨店を中心とした西武流通グループ(後のセゾングループ)に分裂していたが、おおむね協調路線をとっていた。
西武鉄道の親会社としてコクドという会社があり、コクドは非上場だったことから西武鉄道は実態の分かりにくい形で経営されていた。2004年に起きた有価証券報告書の虚偽報告事件で西武鉄道は上場廃止、グループトップの堤義明氏はインサイダー取引で逮捕。これをきっかけにコクドと西武鉄道は西武ホールディングスとして再編され、後に上場。不動産開発を担った西武鉄道グループはプリンスホテルをはじめとするホテル、スキー場、ゴルフ場などのリゾート開発で高度経済成長期からバブル期まで急激な成長を遂げた。
桃太郎電鉄を作った、さくまあきら氏は、堤義明氏や西武グループがゲームのアイデアの元になったとインタビューで答えている。私鉄のビジネスモデルは、単に線路を通すことだけではない。線路を通せば荒れ地が便利な土地となり、人が集まる。そこに住宅や商業施設、娯楽施設を作れば鉄道の利用者が増える。利用者が増えれば土地の値段は上がる。
鉄道会社がどこに線路を通すかを決定することから、合法的かつ大規模なインサイダー取引のようなものともいえるだろう。このような、線路とセットで不動産開発を行えば必ずもうかる、という鉄板のビジネスモデルは戦後長らく続いた。まさに桃鉄とシムシティの世界だ。
世界一のお金持ちになった日本人は、私鉄の社長
新しい駅ができると、その場合は駅から遠かった地域が駅の目の前になることがある。すると土地価格は急騰する。土地の価格は、その立地で得られる収益から決まる。駅の目の前なら、お店を出せばもうかり、マンションを建てれば高く売れる。つまり地価が上がる。
元からそういった場所に土地を持っていた人はラッキーということになるが、これを意図的に行っていたのが西武鉄道のビジネスモデルだ。
このビジネスモデルがどのくらいもうかるものだったかを示す証拠として、グループトップの堤義明氏はバブル絶頂期に、米国の経済紙・フォーブスが発表する世界長者番付で80年代から90年代にかけて1位を何度も取っている。
近年ではアマゾンドットコム創業者のジェフ・ベゾスやマイクロソフト創業者のビル・ゲイツらIT企業の創業者が1位をほぼ独占しているが、かつては日本人がそこにいたこともあったのだ。
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