好決算のスバルがクリアすべき課題:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
今回はスバルの決算が良すぎて、分析したくてもこれ以上書くことが無い。本文で触れた様に、研究開発費は本当にこれでいいのか? そして価格低減の努力は徹底して行っているのか? その2点だけが気になる。
クルマはちゃんと売れたが
営業利益の増減を見てみよう。
例によって左の柱が18年度実績、右の柱が19年度実績だ。左の青い柱が2本あるのは、今年から会計基準にIFRS(国際会計基準)を導入したことを意味し、1995億円の日本基準をIFRSで再計算すると1817億円になる。会計基準を揃えないと年度間の比較ができないので、日本基準の数値で発表した前年度の営業利益をIFRS基準で表した結果1817億円が比較基準になっている。
売上・構成で392億円のプラス。つまりクルマがちゃんと売れている。さらに下段の詳細を見ていくと、国内は80億円のマイナス。普通に考えて消費税のマイナスと若干のコロナの影響と思われる。
しかしながら、海外ではこれが374億円と大幅に伸びており、ここで日本でのマイナスを完全に吸収してプラスに転じている。販売奨励金もプラスの効果だ。ということはインセンティブはむしろ減っている。つまり米国で販売が調子良く、黙っていてもクルマが売れるのでインセンティブも必要がないので削ったということだ。
ちょっとだけ気になるのが研究開発費によるプラス161億円だ。これは研究開発費が減っているということを意味する。CASEをはじめさまざまな先行投資が必要な時期であるはずで、むしろここは増えるべき項目と思う。やるべきことをやった上で削減できているのなら文句はないのだが、果たしてどうなのだろう。やれているのかやれていないのかは数年先に見えてくるだろう。経費や原価と違って、あまり無条件で下がることを歓迎できない項目なので、もし翌年度でも減っているようならば少々嫌な感じになる。
諸経費は国内国外とも減らしている。それでも国内ディーラー向け費用は16億円増えているので、販売店のレベルアップには少なくとも国内に関しては投資が行われている。
為替レートは米ドルで193億円のマイナス、ユーロで31億円のマイナス、カナダドルで20億円のマイナスと、軒並み負け越し。要するに円が上がっているということでこれはどうしようもない。
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