テレワークの「リバウンド」はなぜ起きる? 「意識が低い」で片付けられない構造的な問題:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、テレワークを導入した企業が急増した。ただ、緊急事態宣言解除後は実施率が低下している。テレワークが定着しなかった企業は「意識が低い」のか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。
「新しい働き方」として定着しない
では、そんな「あえてテレワーク化を進めない会社」が日本にどれくらいあるのかというと、419.8万社もある。
421万ある日本企業の中で、「中小企業」は99.7%を占めており、大企業はわずか0.3%しかない。従業者数4013万人で見れば、大企業で働く人は3割を占める1229万人とそれなりのボリュームがあるので、なんとなく世の中的にはテレワークが普及している印象を受けてしまうが、実は残り7割の従業者2784万人は「あえてテレワーク化を進めない会社」にいる。
つまり、在宅勤務を拡大しているトヨタや日立やキリンという会社は実は超マイノリティーであって、この国では「コロナでもテレワークをしない」「緊急事態宣言も解除されたからテレワークはもういいか」という選択をする中小企業のほうが圧倒的大多数を占めているのだ。
それは言い換えれば、このような産業構造が変わらない限り、日本のテレワークが「新しい働き方」として定着しないということだ。パンデミックや自然災害のときに瞬間風速的に普及率は上がっても、テレワークをそこまで必要としていない小さい会社が多いがゆえ、時間が経過すれば「リバウンド」するからだ。
「そんなことはない! これからの時代は中小企業でもテレワークをやらなくてはいけないのだ」という怒りのクレームが、テレワーク導入サポートをするような企業から寄せられそうだが、そのような方たちのビジネスを邪魔するつもりは毛頭ない。テレワークを広めるためにも、「意識をあげよう」みたいなおかしな精神論にすがるのではなく、普及を阻む原因をしっかりと見極めるべきだ、と申し上げたいだけである。
なぜなら、この問題が精神論で片付けられないのは、同じくテレワーク普及率が低い他国を見れば明らかだからだ。NTTデータ経営研究所の「情報未来」(20年7月号)の中にある「働き方改革とウィズコロナ」というレポートに掲載された、総務省などのデータをもとにしている「各国のテレワーク導入状況(企業導入率)」というグラフが分かりやすい
85%とダントツなのが米国で、次いでイギリス(38.2%)、ドイツ(21.9%)、フランス(14.0%)と続いて日本は13.9%とかなり低いのだが、それよりもさらにガクンと導入率が少ないのがイタリア(5.3%)と韓国(1.0%)である。
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