テレワークの「リバウンド」はなぜ起きる? 「意識が低い」で片付けられない構造的な問題:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、テレワークを導入した企業が急増した。ただ、緊急事態宣言解除後は実施率が低下している。テレワークが定着しなかった企業は「意識が低い」のか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。
産業構造を変えなくてはいけない
日本企業のテレワーク化についての議論を見ていると、このような産業構造に基づいた視点は少ない。「テレワークをすれば中小企業でも生産性が上がるからやるべきだ!」というようなバラ色の未来を唱えたり、日本の企業文化を「時代遅れだ」「ブラックだ」と延々とディスったりと「ふわっとした議論」が多い印象だ。
本当にテレワークを定着させたいのなら、産業構造を変えなくてはいけない。日本では「中小企業保護」の名目で、小さな会社は成長しないで、小さなままでいると税金的なメリットもあるし、なんやかんやと助成金ももらえる。そういう小さな会社でい続けることのインセンティブがある限り、日本の産業構造は変わらない。それは裏を返せば、小さな会社の「延命」に金を出すのではなく、「成長」にインセンティブをつけて大きな企業の比率を増やしていけば、日本のテレワークも普及していく。
新型コロナ以降、データや科学に基づかない「ふわっとした議論」が増えてきている。死者や重症者は激減しているのに、無症状の新規感染者数が増えているだけで、「第二波の到来だ!」「緊急事態宣言だ!」と必要以上に恐怖をあおるマスコミや、感染者や感染の広がるエリアを「諸悪の根源」なんてディスる人は、その典型だ。
志村けんさんや、岡江久美子さんが亡くなったと朝から晩までマスコミが取り上げると、「言われてみれば、私もちょっとだるいかも」なんて感じで、自治体や医療機関に検査希望者が殺到して現場がパンクしたように、人はどうしても「恐怖」をあおられると、軽いパニックになって、冷静に物事を考えられななくなるのだ。
こんなときだからこそ、「怖い」「憎い」という感情に支配されて、誰かを引きずり落とすことに頭がいっぱいになるのではなく、起きている現象を冷静に分析して、データに基づいた判断をすることがより必要になってくるのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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