オープンハウスがコロナでも”契約件数大幅増”を達成できたワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
コロナ禍の中大きな影響を受けた不動産業。しかし、そんな状況下で異彩を放つ企業が存在する。それは、オープンハウスだ。コロナ禍前を上回る水準で株価が推移している。その背景には、リモートワークが広まる中で、同社が得意とする低価格な戸建ての需要がある。
戸建て物件はリモートワークに最適?
コロナ禍の影響で、都心部は全国でも特に人の動きが制限されることとなった。この点で、不動産会社は対面営業ができなくなったり、予定通りの工期で建物が納品されなかったりと、業務が著しく制限される環境に陥ってしまった。
しかし、最も感染が著しかった都心部だからこそ、リモートワークの普及率が爆発的に伸びた点を見逃してはならない。東京都が5月にまとめたテレワーク導入状況に関する調査では、4月の段階で都内のテレワーク普及率は62.7%となっていた。これは、パーソル総合研究所が同時期にまとめた、全国の27.9%と比較して倍以上の普及率となっている。
この普及率の差異からも、都心部では「テレワークに悩みを抱える消費者」が地方部と比較してかなり多く存在することが伺える。家での仕事環境に悩みがあるのであれば、設備を整えるか、家を変えるしかない。
ここでオープンハウスの20年第2四半期(19年10月−20年3月)の決算資料を確認すると、コロナ禍中に戸建てを購入した消費者の動機として、「テレワークに備えてフロアを変えて家族と仕事ができる」というものや、家族と過ごす時間が増加したことで「家のことを考えるようになった」といったもの等が挙げられていた。コロナ渦によるリモートワークで、戸建ての利便性を評価する消費者も少なからず存在していることが分かる。
また、リモートワークにつきものとなる業務がZoomなどを用いた「オンラインミーティング」だ。これは、マンション・アパートタイプの物件では近隣との騒音トラブルだけでなく、会議の音声が漏れることで会社の情報が漏えいしてしまうという深刻なリスクをはらんでいる。
そのような背景もあって、戸建てタイプの住宅が都心の消費者を中心に再評価されていることがオープンハウスの契約件数にプラスの影響を与えていると考えられる。現に、オープンハウスのWeb新規会員登録数は前年同月比で、4月に1.3倍、5月に1.61倍、6月には1.96倍と、月を追うごとに消費者の関心が高まっている様子がみてとれる。
仮にコロナ禍が今後も長期化するのであれば、消費者は一層リモートワークを想定した働き方や居住環境を構築しなければならない。そのような消費者が、都心の戸建て、ひいてはそれらの販売に強みを有するオープンハウスに関心を寄せるのは実は自然な動きであるといっても過言ではないだろう。
コロナ禍中は広告出稿を絞る企業の例も見られたものの、オープンハウスは新バージョンのテレビCMを数本追加して放映を継続するなど、積極的なプロモーションや営業姿勢を崩さなかった。一見ピンチと思われるコロナ禍も、冷静に消費者のニーズや動向を確認すればチャンスとなり得る。不確実性の高い環境下で成果を出すためには、消費者ニーズの変遷という外部環境に甘んじるだけでなく、外部環境の変化をキャッチし、商機に変えようとする姿勢こそが求められるのだ。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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