何が問題だったのか? コンビニ、24時間営業問題の本質:利害の対立(2/4 ページ)
コンビニの「24時間営業」問題に関し、コンビニ本部は「それが本当にFC店オーナーのためになるのか」という問いに答える責務がある。その関心の矛先がどこにあるかを端的に表すのが「ロイヤリティの算出ベース」だ。
24時間営業を止めたい(時短営業したい)というFC店オーナーの言い分はシンプルだ。「深夜営業は売り上げが上がらない。その一方で、元々値上がり傾向にあるバイト代は深夜増しでさらに高くなり、人件費などの運営費が粗利を上回ってしまう。つまり赤字になる。だから止めたい」というものだ。
仮に深夜のバイトに応募してくれる人を確保できずにオーナー家族自らが深夜営業すれば、バイト代は節約できるかもしれないが、過労で家族の生活は破綻しかねない。これはこれで大きな問題だ。そのため世間は概ねFC店オーナーに同情的だった。
それに対しセブンなどは、「大半のFC店からはそんな問題は指摘されていない。一部の怠慢な店側の問題だ」と当初はあからさまに問題の矮小化を図っていたが、多くのFC店からも同様の問題が指摘されるようになると、別の言い分を主張し始めた。面白いのはそのビジネスモデルゆえの特殊なロジックだ。
いわく、「24時間開いているという信頼があるからこそお客様は来店する」「未明の時間に納品検品を済ませ弁当などの品出しを済ませておかないと早朝の来店客に間に合わない」「早朝に開いていることを見せておかないと午前中から昼間に掛けての売り上げが伸びない」などという主張だ。多少なりともこの業態の特殊な事情を理解していないと、「?」といったところだろう。
それにもう一つ、コンビニ本部としてはいくつもの店が時短営業になってしまうと、そのエリアへの深夜配送の効率が落ちてしまうという事情もある。あまりあからさまに主張すると「本部の理屈だ」と反発されるかもしれないので言わないようだが、それがビジネスの全体最適と密接な関連を持つことは認めてしかるべきだろう。
これらのコンビニ本部の言い分は長い間に、そして日本各地での営業を通して裏付けされており、ビジネス運営者の視点からはそれなりに経済合理性を持つものだ。
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