ハリアーはアフターコロナのブースターとなるか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
多くの読者はすでにハリアーが今年の大注目モデルであること、そして売れ行き的にもとんでもないことになっていることをご存知のことと思う。7月17日にトヨタから発表された受注状況は、それ自体がちょっとしたニュースになっている。
絶賛炎上中のウィンカー
新型ハリアーは、運動体としての本質の部分での素性の良さはお見事ながら、あと少し詰めきれていない部分があるのも事実だ。しかし当面のライバルであるドイツ車たちも昔のレベルではない。絶賛劣化中である。ハリアーは、価格的にいえばベンツのAやBクラス、あるいはその派生車種とぶつかる。しかし、それらドイツ車がCセグメントで、Dセグメントであるハリアーより格下にも関わらず、むしろ価格的には割高であることを勘案すれば、ハリアーはかなり魅力的に映るのではないか?
少なくとも80年代のように、欧州車と日本車を比べた時、クルマの味では月とすっぽんだなどということはもはやない。対抗にベンツのSクラスを持ってくるような無茶をしない限り、その味の差が我慢できないから安物は買えないという理論はもう成立しなくなった。少し煽(あお)り気味にいえば「もうベンツを買ってる場合じゃありませんよ(笑)」というところか。
ここ数年、「味」の領域で欧州車と渡り合える日本車が増えてきた。もとより信頼性と価格(価格は最近少し怪しいが)では圧勝、ハイブリッドに関しては燃費でコールド勝ち位に強い。これで味まで並べば、最後の砦を攻略したに等しい。日本車の覇権時代が再び始まる可能性は高い。
最後にウィンカーの問題に触れよう。ボディ側面から、リアウィンドー下を巻いて走る薄いテールレンズは、ブレーキランプとテールランプがビルトインされているが、実はここにはウィンカーはない。ウィンカーは、バンパー下のメッキガーニッシュの中に組み込まれている。
それはつまり、視認性の面でベストとはいえない位置にあることを意味する。当然「安全面でそれで良いのか」という声が起きる。
そういうことになった理由をトヨタに説明を求めると、世の中にはさまざまなクルマがあって、リソースの配分はそれぞれに違うという。まあそれはそうだろう。そして、ハリアーにとっては、デザインは他のクルマよりプライオリティが高いところにあるのだと。法規が求める輝度の光源を、あの薄さのレンズにビルトインすることはできないのだとトヨタはいう。そういわれると、光源の性能と法規の適合の話なので、筆者は反論するだけの材料を持っていない。そういうものなのだと受け取るしかない。だからそれを前提に話を進める。
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